昆虫食、代替肉など新たな食材の開発は、世界の食糧問題や環境問題などの切り札になる可能性を秘めている。しかし、人には「見たことのない料理」を目の前にすると口に入れることをためらう「フードネオフォビア」がある。その克服に向けた研究は経営学でも進みつつあり、マーケティング戦略にも今後インパクトを与えるかもしれない。

 もし食事中、あなたの目の前に「見たことのない料理」「何が入っているかも分からない料理」が出てきたら、口に入れることを躊躇(ちゅうちょ)しないだろうか。このような状況で食べることをためらったり、避けたりといった行動は「フードネオフォビア」と呼ばれる。

 ネオフォビアは「ネオ(新しい)」と「恐怖症(フォビア)」を組み合わせた言葉であり、ここからフードネオフォビアとは「初めて見る」「なじみのない」食品に恐怖感を抱き避けようとすることを指す。「食物新奇性恐怖」とも呼ばれ、アカデミックの世界では「未知の、またはなじみのない食べ物に対する恐れや嫌悪感」と定義される。

 食べたことのない食品の場合、安全性に問題がありそうならばそもそも口に入れないが、安全だと分かった場合でも警戒する。これが人を含む雑食動物の基本的な行動様式だ。現代の先進国において流通している食品はアレルギー反応などを除けば原則として安全なのだが、一方でフードネオフォビアは根強く存在している。

トナカイ肉を使った伝統的なフィンランド料理(写真:Shutterstock)
トナカイ肉を使った伝統的なフィンランド料理(写真:Shutterstock)

 何を食べるかは最終的には消費者個人の判断だが、その過程では習慣や食文化が大きく関係する。例えば、北極圏では一般的な食肉用となっているトナカイは、日本に住む我々にとっては「サンタクロースのそりを引いている動物」であり、食べようという発想はあまり浮かばない。日本の場合、消費者は「安全のため」トナカイを食べないのではなく「食べたことがないから」「食べる文化がないから」食べないのである。

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