(写真:PIXTA)
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休校は教育や生活に大きな打撃

 安倍晋三政権時、新型コロナウイルス下で真っ先に下された決断が学校の休校だった。その効果についてきちんと検証しないまま、市民は冬に懸念される第6波の襲来やインフルエンザの感染拡大に対する備えを迫られている。

 あの休校は本当に意味があったのか? 2人の子を持つ親としてそう疑問に思った学習院大学法学部政治学科の福元健太郎教授が、子どもたちに休校の意味を説明したいとの思いから実証研究に取り組んだところ、研究成果が国際的な医学学術誌「Nature Medicine」に掲載された。福元教授は研究内容について、「娘たちへの手紙」というスタイルで日経ビジネスに寄稿した。国内のデータに基づく福元教授の分析では、休校による新型コロナウイルス患者の減少は見られなかった。

 緊急事態宣言が解除され、ようやく暮らしが少しずつだけど元に戻りつつあるね。思えば、新型コロナウイルスの怖さを強く感じたのは、2020年3月に突然休校になった時だった。

 小学校6年生だったお姉ちゃんの君は、卒業直前に級友との思い出を深めるはずだった最後の1カ月が、いきなり消えてしまった。中学校に上がっても入学式はなく、新たな同級生にも会えなかった。妹の君も、家で勉強するための教材も大して配られなかったから暇そうだったし、友達とも会えなくてつまらなかっただろうと思う。平日まで家族で一緒に昼食をとったり、運動不足を兼ねて散歩したりしたのはうれしくもあったようだけど、逆にお母さんはてんてこ舞いだった。

 学校を休みにしたのは、新型コロナにかかってしまった子が他の子にうつして新型コロナがどんどん広がってしまうといけないので、それを防ぐためだった。でも君たち自身が体験したように、休校にすると困ることもたくさんある。

休校にしなかったら、新型コロナはどうだったの?

 じゃあ、もし休校にしなかったら、コロナはどれくらいひどくなっていたんだろう? それは君たちがつらい思いをしてまで避けなければいけないものなんだろうか?

 お父さんは、君たちのかたきをとるつもりで、仲間のチャールズ・マックレーンさんや中川訓範さんと一緒に、それを研究することにしたんだ。最近ずっとパソコンに向かって仕事をしていたのがそれさ。実はその成果が最近「ネイチャー・メディシン」という医学系の学術誌で発表された。