(写真:Shutterstock)
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 昨今、職場における「ワークエンゲイジメント」の重要性が広く認識されるようになってきた。ワークエンゲイジメントとは、「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の3つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられている。

 バーンアウトした従業員は疲弊して仕事への熱意が低下している。それに対し、ワークエンゲイジメントの高い従業員は、心身の健康が良好で、いきいきと働いている状態にある。

 日本においてワークエンゲイジメントが注目されている背景には、高齢化と人口減少が加速する中で、一人ひとりが心身の健康を維持しながら高い生産性を発揮することへの期待がありそうだ。しかし、ポジティブなメンタルヘルス、すなわちワークエンゲイジメントが高くなれば生産性は本当に高まるのだろうか。

 実は労働者のワークエンゲイジメントが、職場あるいは企業レベルの生産性に及ぼす影響を分析したものはあまり多くなく、特に財務データなどの客観指標を用いたものは極めて少ない。

「ワークエンゲイジメント」は生産性を高めるのか?

 そこで、筆者ら(慶応義塾大学・山本勲氏、同・島津明人氏、ドイツ・ユトレヒト大学・ウィルマー・B.シャウフェリ、及び筆者)は、大手小売業1社から提供を受けたワークエンゲイジメントの設問が組み込まれた従業員調査と人事データ、そして売り場ごとの売上高データをひもづけ、従業員のワークエンゲイジメントと売り場の売上高との関係を検証した。研究成果の詳細は経済産業研究所のHPに掲載されており、以下ではその一部を紹介することとしたい。

 図1はこの企業で、実際に売り場で販売に従事している従業員のワークエンゲイジメントの分布を示したものである。分析で使用した従業員調査は、97.3%と非常に高い回答率であり、同一企業内で従業員のワークエンゲイジメントがどのように分布しているかを観察することができる。

(注)180の売り場で販売業務に携わる3894人を対象とした分布
(注)180の売り場で販売業務に携わる3894人を対象とした分布

 図1をみると、同一企業に勤め、売り場の販売職という同一の業務を担う従業員間でも、ワークエンゲイジメントの水準が最低スコアの0から最高スコアの6まで広く分布していることが分かる。つまり、同一企業内でもいきいきと働いている従業員と、そうではない従業員が混在していることが見てとれる。

続きを読む 2/3 ワークエンゲイジメントの温度差が生産性に影響

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