筆者ら4人は、日本の衆院小選挙区の区割り改定のシミュレーション「47都道府県区割りシミュレーション」に昨年来取り組んでいる。このプロジェクトでは、市区町村の分割を原則避けることなどを定めた「区割り改定案の作成方針」に準拠しつつ、各都道府県内の1票の格差を低減する区割りの作成が可能であるか研究している。

 なお、日本では「1票の格差」とは、全国較差(最大の選挙区の人口と最小の選挙区の人口の比)のことを指すが、本プロジェクトでは、都道府県内の1票の格差である「都道府県内較差」(各都道府県内の最少の選挙区に対する格差)に注目した。全国較差の低減には、1選挙区当たりの人口が多い都道府県と少ない都道府県それぞれで都道府県内較差を低減させる必要がある。故に、都道府県内較差の低減は全国の1票の格差の低減につながる。

1人1票原則を重視する米国

 そもそも、各地域内の「1票の重み」の均衡を重視する見方もある。米国各州で見直される連邦議会下院の区割りでは、多くの場合、州内の1票の格差はほとんどなくなるように、市なども分割しながら州内の選挙区人口はほぼ均等にされている。

 つまり、合衆国憲法で保障された「1人1票」の原則を守るためには、時に市区町村を分割してまで州内(日本だと都道府県内)の選挙区間の人口の均衡を図ることが必要というのである。

 筆者らのプロジェクトでは、市区町村分割を抑制しながら、選挙区間の人口の均衡を図る区割りの可能性を検討している。具体的には逐次モンテカルロ法(SMC)を応用した区割りシミュレーションの手法を活用した。

 数学的な説明はここでは省略するが、このSMCを一言で概説すれば「選挙区の境界をランダムに1区ずつ線引きし、選挙区を徐々に形成させる作業(図1参照)を多数繰り返すアルゴリズム」である。この際、町丁・字などを単位としながらも市区町村分割を抑えるなどの制約を加えることができる。

図1 SMCアルゴリズムによる区割りシミュレーション
図1 SMCアルゴリズムによる区割りシミュレーション
出所:ALARMプロジェクト

 なお、各都道府県の区割りのシミュレーションの結果やデータ、コードは順次Web上で公開している。ここでは、今般の区割り改定において定数減の対象となった広島県と、定数増の対象となった東京都の例を紹介する。

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