しかし、ペロシ氏の訪台は中国国民の間で不満を生み出し、その怒りの矛先は習近平総書記に向かった。習氏は今秋の中国共産党全国代表大会で総書記3期目の続投を狙っており、国民の不満や怒りを解消する必要に迫られた。それゆえ、中国は台湾製品の輸入禁止など経済制裁を課し、台湾周辺で軍事演習を実施した。

 今回の軍事演習は、多くの台湾人の間で大きな脅威を必ずしも生み出したわけではない。その理由は20年以降の中国による領空侵犯の増加を反映して、台湾人が中国の軍事活動に慣れてしまったのかもしれない。しかし、中国の強硬な外交上の巧言や軍事行動は、台湾人の愛国心を高め、蔡総統や与党の防衛政策に対する支持を強め、中国に対する強硬政策に対する要求を増加させうる。

 中国が台湾に対して外交的抗議を繰り返すのであれば、「中国が台湾からの反発を生むことによって、さらに中台関係の緊張を高める」という悪循環から、抜け出せなくなるかもしれない。

【記事中の参考文献】
(1) Mueller, John E. 1970.“Presidential Popularity from Truman to Johnson.” American Political Science Review, 64(1): 18-34. doi:10.2307/1955610
(2) Grossman, Guy, Devorah Manekin, and Yotam Margalit. 2018. “How Sanctions Affect Public Opinion in Target Countries: Experimental Evidence from Israel.” Comparative Political Studies. 51(14): 1823-1857. doi:10.1177/0010414018774370
(3) Frye, Timothy. 2019. “Economic Sanctions and Public Opinion: Survey Experiments from Russia.” Comparative Political Studies. 52(7): 967-994. doi:10.1177/0010414018806530
(4) Alexseev, Mikhail A., and Henly E. Hale. 2020. “Crimea Come What May: Do Economic Sanctions Backfire Politically?” Journal of Peace Research. 57(2): 344-359. doi:10.1177/0022343319866879
(5) Sejersen, Mikkel, 2021. “Winning Hearts and Minds with Economic Sanctions? Evidence from a Survey Experiment in Venezuela.” ,Foreign Policy Analysis, 17(1). https://doi.org/10.1093/fpa/oraa008
(6) Kagotani, Koji, and Wen-Chin Wu. 2022. “When Do Diplomatic Protests Boomerang? Foreign Protests against US Arms Sales and Domestic Public Support in Taiwan.” , International Studies Quarterly, 66(3). https://doi.org/10.1093/isq/sqac043

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