8月16日、医療費削減や気候変動対策などを盛り込んだインフレ抑制法案に署名したジョー・バイデン米大統領(写真:AFP/アフロ)
8月16日、医療費削減や気候変動対策などを盛り込んだインフレ抑制法案に署名したジョー・バイデン米大統領(写真:AFP/アフロ)

 米上院民主党の妥協案である2022年のインフレ抑制法は(編集部注:2022年8月16日に成立)、インフレだけでなく、経済や社会が長年直面しているいくつかの重要な課題に対応する内容になっている。

 足元のインフレの原因については熱い議論が交わされているが、どちらの立場に立つにせよ、この法案は一歩前進と言える。過剰な需要を心配する声に対応し、法案には3000億ドル(約42兆円)以上の赤字削減が盛り込まれている。供給面では、エネルギー安全保障と脱炭素化のために3690億ドルを投じることで、現在の物価上昇の主因の1つである燃料コストを下げると同時に、30年までに二酸化炭素排出量を05年比で約40%削減する目標に向けた道筋を描いている。

 こうした数々の投資は、広範にわたる見返りをもたらすだろう。山火事やハリケーン、竜巻、洪水といった気候変動に起因する様々な事象にかかるコストは、足元のインフレ以上に私たちの生活水準を低下させ、低所得世帯、有色人種、将来の世代に対し不公平な負担を強いることになる。こうした犠牲は、財政赤字にかかるコストよりもはるかに大きく、是正が困難だ。

 エネルギー安全保障の強化も不可欠だ。産油国の権威主義的な指導者たちはあまりに長い間、世界の他の国々を人質に取ってきた。私たちはロシアのプーチン大統領(の最近の行為)により、エネルギーの相互依存に深刻なリスクが伴うことを改めて認識した(私は15年以上前に、このリスクについて警告を発している)。天候は時により変わるが、化石燃料を持つ国の独裁者は信頼できず、ただただ危険な存在だ。

製薬業界にもメス

 インフレ抑制法はまた、米国を長年苦しめてきた医療費の高騰にも対処する。オバマ政権下で成立した医療保険制度(オバマケア)の保険料を引き下げることで、何百万人もの米国民の負担を軽減するほか、高齢者向け公的医療保険「メディケア」加入者の薬剤費の自己負担額に上限を設けて医療費の高騰を抑える。

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