誰が破壊の後始末をするのか(写真:Abaca/アフロ)
誰が破壊の後始末をするのか(写真:Abaca/アフロ)

 ロシアによるウクライナ侵攻は終結の兆しを見せていないが、戦後のウクライナの安定、繁栄、安全を確保する方法について考え始めるのに早すぎるということはないだろう。すでに経済再建のための資金調達と、ウクライナの対外的な安全保障の確保という2つの議論が進行中である。問題は、両者が密接に関連しているにもかかわらず、別々に議論が進められていることである。

 戦争の見通しが不透明なため、復興費用の予測は難しい。戦前のウクライナの国内総生産(GDP)は約1500億ドル(約20兆円)だった(※編集部注:元原稿ママ。別データあり)。資本係数(資本ストック/GDP)を3として、資本ストックの3分の1が破壊されると仮定すると、やはり1500億ドルということになる。当然、仮定の数値を置き換えれば概算も変わるが、1500億ドルは妥当な出発点であると思われる。

 これは、資金提供国にとって不可能な援助額ではない。1500億ドルは、2020年7月に欧州連合(EU)諸国が合意した「次世代EU」復興基金の6分の1、昨年3月に米バイデン大統領が署名し、成立した経済対策法の12分の1の規模である。

 とはいえ、ロシアが破壊したものを米国と欧州に修復するよう求めるのは間違っているようにも思える。ロシアの資産を差し押さえて、ウクライナの復興費用を賄うべきだと提案したくなる。2840億ドルというロシア中央銀行の凍結資産は、そうするのに十分な金額だ。

安全保障は、経済回復のためにも不可欠

 たしかに、賠償金には道義的な側面もある。ロシアが正当な理由なしに戦争を始め、その遂行のために戦争の罪を犯したことはほぼ間違いない。また、抑止力という観点から議論すれば、ウクライナのゼレンスキー大統領が今年の世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で述べたように、「侵略者が全てを失えば、戦争を始める動機が失われるのは間違いない」とも言える。

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