「人権問題」で矢面に立ち苦戦するディズニー(写真:Joe Raedle / Getty Images)
「人権問題」で矢面に立ち苦戦するディズニー(写真:Joe Raedle / Getty Images)

 「カルチャー・ウォー」と呼ばれる政治的・宗教的・文化的な価値観の対立が米国の分断を深めていることは広く知られている。銃規制、中絶、人種差別、LGBTQ(性的少数者)の権利など、人権関連の問題で保守派とリベラル派の間で価値観が大きく対立し、それが共和党と民主党という政党の間に埋め難い溝をつくり、米国政治が機能不全に陥っている。

 この分断があらゆる分野に波及するに及んで、最近では、これまで価値観にまつわる問題への深入りを避けてきた企業も、何らかの態度表明をすることを余儀なくされている。例えば現在、米国を代表する優良企業ディズニーがカルチャー・ウォーの最前線に引きずり出されて苦戦している。

 2022年3月28日、米フロリダ州のロン・デサンティス知事が「ドント・セイ・ゲイ法」と呼ばれる、小学校低学年までの子供に対する学校教育でLGBTQ関連の議論を取り上げることを禁止する法律に署名し、同法が成立した。

曖昧な態度に従業員が反旗

 この法律の制定過程を通して、フロリダ州にあるディズニー・ワールドの従業員などから、米ウォルト・ディズニーのボブ・チャぺック社長がこの法案に対して曖昧な態度を取り続けたとして、不満の声が巻き起こった。前社長のボブ・アイガー氏までもがチャぺック社長の対応を批判。これを受けてチャぺック社長はそれまでの対応を謝罪し、この法に反対し、その撤廃を目指すという方針を明らかにしたが、彼のリーダーシップに対する不満は収まっていない。

 さらにこうした動きに対して、今度はデサンティス知事が、1967年から続くディズニー・ワールドの持つ税制優遇措置と特別自治権を取り上げると発表した。デサンティス知事といえば、トランプではないトランピズムの継承者として、2024年の共和党大統領予備選では、トランプ前大統領の最大の対抗馬とも目される政治家である。

 最近では、これまで黙って従ってきたトランプ氏にも反論するようになるほど政治家として自信をつけてきており、今回の騒動でも保守派の支持を取り付けるべく、巧みに文化的分断の中核をなす人権問題を利用しているわけである。

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