米オクラホマ州では4月、中絶禁止法が成立した(写真:AP/アフロ)
米オクラホマ州では4月、中絶禁止法が成立した(写真:AP/アフロ)

 かつては、奴隷か主人か、皇帝か臣民か、貴族か農奴か、男か女か、黒人か白人か、といったように、生まれた時点でその人が何者であるかによって、その後の人生が決まるという考え方があった。しかし、時代とともに、道徳的な革命が起こり、人は単に自分のアイデンティティーを受け継ぐだけだという考え方が崩されてきた。

 今日、西欧諸国のほとんどの人々は、自己のアイデンティティーの核心にあるのは選択であると認識している。私たちは貧困層に生まれても大統領になることができる。子供がいないキャリアウーマンであることも可能である。

 私たちの道徳的な進歩は、私たちがなりたい人になるために努力することを可能にする権利、つまり他の人と同じ保護を受けながら、本当の自分としてオープンに生きることを可能にする権利の中に、刻み込まれてきた。しかし、このほど漏洩した、中絶手術を禁止する法律の合憲性に関する訴訟(ドブス対ジャクソン女性健康機構)に関する連邦最高裁の多数意見案は、現在、私たちを生物学的決定論の暗黒時代に引き戻そうとする恐れがある。

 サミュエル・アリート判事によって作成され、ジョン・ロバーツ最高裁判事によって真正性が確認されたこの草案は、中絶に対する憲法上の権利を認めた半世紀前の判決である「ロー対ウェイド裁判」を打ち砕くものだ。共和党が任命した4人の判事(クラレンス・トーマス、ニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレット)は、アリートに投票するものとみられている。

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