中国では新型コロナウイルスの感染が拡大している(写真:AFP/アフロ)
中国では新型コロナウイルスの感染が拡大している(写真:AFP/アフロ)

 多くの先進国や新興国が直面する新たな現実は、インフレ率の上昇と経済成長率の鈍化である。そして、現在のスタグフレーションの大きな原因は、生産を抑制し、コストを上昇させた一連の負の総供給ショックである。

 これは当然のことだろう。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で多くの企業が操業停止に追い込まれ、世界のサプライチェーンが混乱し、特に米国で労働力供給が明らかに減少した。そしてロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー、工業用金属、食料、肥料の価格を高騰させた。さらに、中国が上海などの主要経済都市に対して新型コロナ抑制のためにロックダウンを命じたことから、サプライチェーンの混乱と輸送のボトルネックが発生している。

 このような短期的な大事件がなかったとしても、中期的な見通しは暗くなりそうだ。世界経済は今後もスタグフレーションの様相を呈し、多くの国でインフレ率の上昇と成長率の低下、さらには景気後退をもたらすと懸念され、不安要因は枚挙にいとまがない。

 まず世界金融危機以降、グローバリゼーションが後退してきたことで、さまざまな保護主義が復活している。これは、国民の多くが「(成長から)取り残された」と感じている国々における、地政学的要因と国内の政治的動機をともに反映した動きである。

 地政学的な緊張の高まりとパンデミックが残したサプライチェーンの傷痕は、中国や新興国から先進国への製造拠点の回帰、あるいは、少なくとも政治的同盟国群への「ニアショアリング」(注1)(あるいは「フレンドショアリング」)につながる可能性がある。いずれにせよ、生産はよりコストの高い地域や国へと正しくない割り当てが実施されることになる。

注1:既存の拠点からより低コストな近隣国にオフショアリングすること。

 さらに、先進国や一部の主要新興国(中国、ロシア、韓国など)では人口の高齢化が進み労働力の供給が減少するため、賃金インフレが起こるだろう。また、高齢者は働かずに貯蓄を消費する傾向があるため、この層の増加はインフレ圧力を高めると同時に、経済の潜在成長率を低下させるであろう。

 先進国における移民に対する根強い政治的・経済的な反感も同様に、労働供給を減らし、賃金上昇の圧力となる。何十年もの間、先進国では大規模な移民受け入れが賃金上昇に蓋をしてきた。しかし、そのような時代は終わったように見える。

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