習近平(シー・ジンピン)国家主席は個人に権力を集中させているため、さらに間違いを犯しやすくなっています。彼は新型コロナウイルスの制御で大きな間違いを犯しました。長い間、よく分からなかったのですが、徐々に実態が明らかになりつつあります。

 中国製ワクチン(シノバックス、シノファーム)は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を抑えるのに実はあまり効果がなく、とりわけ新たな変異型の感染拡大をうまく抑えられませんでした。この不手際で、経済成長の鈍化がますます深刻になるのではないでしょうか。

 ですので、権威主義的な体制の方がより勢いがあるから、人々は自由を諦めて権威主義を選ぶべきだというのは、近視眼的な議論といえるでしょう。

人間には「自由」が必要

 確かに中国はめざましく成功しました。しかし権威主義的な支配が「中所得のわな」を乗り越えられるという証拠はありません。権威主義では国家による監視がまん延し、プロパガンダ、思想統制や脅迫が横行しています。将来を見据えると、持続可能で躍動的に成功する国や経済であるとは到底思えません。

 権威主義の方が富の蓄積に都合が良いかもしれないという見方は、今後数年で逆転することになるでしょう。今はその逆転の過程にあります。

 ここで逆転しなかったとしても、あるいは権威主義が国家の発展においてささやかにでも優位であるという兆しを見せたとしても、インド系米国人のノーベル賞経済学者アマルティア・セン氏が言ったように、基本的に自由は発展における重要な構成要素であり、人間にとって必要なものです。

民主主義が衰退していきそうな中、企業の果たすべき役割とは何だと思いますか。

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