ロシアによるウクライナ侵攻は、冷戦終結後の世界秩序を大きく揺るがし、「歴史の転換点」を象徴する事変となりつつある。2018年に著書で「無秩序な世界」の到来を指摘していた米外交問題評議会会長のリチャード・ハース氏は、世界秩序にもたらされた危機をどう見るのか。
ロシアのウクライナ侵攻をどう見ていますか。ハース会長が数年前に出版した著書『A World in Disarray』で書いた秩序なき事態が、現実のものとなりつつあるように見えます。
リチャード・ハース米外交問題評議会会長(以下ハース氏):ロシアのウクライナ侵攻は、世界に無秩序が拡大していることを反映したものであると同時に、おそらくその一因ともなる出来事と言える。
国境を軍事力で侵してはならない、国家主権は尊重されるべきだという、国際関係の最も基本的なルールに違反している。つまり世界の秩序に対して脅威となる、かなり悪い状況だ。

その上、ウクライナの民間人に対する直接的な攻撃、一般人が処刑される残虐な行為が日々報じられている。これはすべてが本当に恐ろしい。
ただ救われるのは、ウクライナの人々と指導者たちが、大きな勇気とたくましさを持って行動してきたことだ。ウクライナ人が自分たちの政府やシステム――ここでは民主主義――を信じ、そのために戦っている。
願わくばこのことが、侵略への誘惑に駆られる他の国家を踏みとどまらせることにつながってくれたらと思う。少なくとも、もう少し熟考するようになるに違いない。
北大西洋条約機構(NATO)加盟の30カ国が、侵略に抵抗するウクライナを支援するため一致団結したという事実は、同盟の存在が依然として重要であるという、世界へのメッセージだ。つまり民主主義国家は、互いに支え合うことを望んでいるということだ。
日本を含む世界中の多くの国々がロシアを批判し経済制裁を支持していることも、それを示している。
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