企業は何のために存在するのか――。行き過ぎた株主第一主義や短期の利益追求を見直す機運が高まり、世界の経営者がESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)に目を向けている。「Business as a force for good(善に導く力としてのビジネス)」を掲げる仏ビジネススクールINSEAD(欧州経営大学院)のイリアン・ミホフ学長に経営者の役割などについて話を聞いた。

最近、我々の社会生活の中でもビジネスの世界でも、サステナビリティー(持続可能性)と幸福度が話題になっています。企業の役割は変わりつつあるのでしょうか。
イリアン・ミホフINSEAD学長(以下、ミホフ氏):INSEADはビジネスと社会に焦点を当てています。学長に任命された1年後の2014年にBusiness as a force for goodという理念を打ち出しました。今日、多くのビジネススクールがその方向に進もうとしていますが、社会や環境について考えなければならないというこの信念は、INSEADの文化に既に深く根付いています。
経営者は確かに会社のために価値を創造すべきで、利益を最大化する必要があります。しかし、今日の世界では、それだけでは十分ではありません。環境や社会に対してどのような影響を与えるか、従業員の福利厚生はどうなっているのか。サプライチェーン(供給網)はどうなっているのかも考えなければなりません。
INSEADでは17年に「ビジネスと社会」のコースを作りました。そこで、全員に必修の倫理コースを設けました。人がどう意思決定するのかを振り返る内容です。正解はありません。しかし決断するとき、その意味するところを広い意味で考えるよう気付きを与えるのが狙いです。
決断が後々もたらす結果を考えない人々
人が悪いことをするのは、多くの場合、彼らが悪いというより、深く物事を考えていないからだと思います。自覚がないのです。その決断がもたらす結果について深く考えていないのです。だから、自分の決断が及ぼす影響について意識を高めることはとても重要です。
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