ベストセラー『ビジョナリー・カンパニー ZERO』の共著者であるジム・コリンズ氏は、長期にわたって成功し続ける偉大な企業とそのリーダーの条件を探ってきた。30年近くに及ぶ研究生活で出会った最高の経営者は誰か、また偉大な会社を築くリーダーに求められる資質は何かを尋ねた。
(聞き手は本誌編集長・磯貝高行、翻訳家・土方奈美)

これまで研究してきた中で最も尊敬する経営者は誰か。

ジム・コリンズ氏(以下、コリンズ):1人だけ選ぶなら、米紙ワシントン・ポスト社主だったキャサリン・グラハムだ。夫の自殺という悲劇を受けて、思いがけず一族の経営する新聞社の経営者になった。そんな逆境にも負けず、「ペンタゴン・ペーパーズ」や「ウォーターゲート事件」などで時の政権から圧力をかけられても同紙の倫理を守り、単に生き残るだけではなく米国で最も優れた新聞になるという目標に全力で取り組んだ。まさに謙虚さと不屈の意志を兼ね備え、私が著書で記した「第五水準のリーダーシップ」の持ち主だ。

偉大な経営者に求められる資質をよく聞かれるが、あえて「必須ではない」資質を挙げよう。それは圧倒的なカリスマ性だ。カリスマはあっても構わないが、絶対に必要なものではない。グラハムも生来の不安症だった。それでも大切な理念のために個人のエゴを抑えられる強さ、そして理念のためにはどれほど困難であっても必要なことはすべてやるという決意があった。

<span class="fontBold">ジム・コリンズ</span><br>『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年には米フォーブス誌の「現代の経営学者100人」にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)<br/>(写真:George Lange)</a>
ジム・コリンズ
『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年には米フォーブス誌の「現代の経営学者100人」にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)
(写真:George Lange)

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