2年近くに及ぶ新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)は、企業にさまざまな変革を迫っている。100年に1度の危機に際して企業が変えるべきもの、変わらないものとは何か。危機を経て一段と強くなる企業の条件、経営者に求められる資質などを、ベストセラー『ビジョナリー・カンパニー ZERO』の共著者であるジム・コリンズ氏に聞いた。全4回にわたってお届けする。
(聞き手は本誌編集長・磯貝高行、翻訳家・土方奈美)

パンデミックは世界をどう変えたのか。

ジム・コリンズ氏(以下、コリンズ):「歴史とはサプライズの研究である」とは、歴史学者エドワード・T・オドーネルの言葉だ。私たちの生きる世界の本質をよく捉えており、今回のパンデミックは改めてそれを痛感させる出来事だった。

 ほんの10年ほど前には世界金融危機があり、そのまた10年ほど前に米国は世界同時多発テロを経験した。ここからも明らかなように、破壊的サプライズが起こるというのが歴史の基本パターンだ。今後も「ニューノーマル(新常態)」など到来しない。ノーマルではない状況がずっと続く。私たちは生きているかぎり、不安定と想定外のショックを生き延びていかなければならない。それをパンデミックは経営者に思い知らせたといえる。

<span class="fontBold">ジム・コリンズ</span><br>『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年には米フォーブス誌の「現代の経営学者100人」にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)<br/>(写真:George Lange)</a>
ジム・コリンズ
『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』(Built to Last、ジェリー・ポラスとの共著)をはじめとする世界で1000万部超のロングセラー『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者。米コロラド州ボールダーの研究ラボを拠点に四半世紀以上にわたって偉大な企業を研究、経営者から絶大な支持を集める。2017年には米フォーブス誌の「現代の経営学者100人」にも選出された。著書に『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(Good to Great)、『ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階』(How the Mighty Fall)、『ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる』(Great by Choice、モートン・ハンセンとの共著)
(写真:George Lange)
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今回の危機から経営者が学ぶべきことは何か。

コリンズ:経営者に求められるのは、建設的パラノイア(極度の心配症)を実践することだ。事業環境が突然、それも劇的に変化し得ることを想定し、「こんなことが起きたら?」「あんなことが起きたら?」と執拗(しつよう)に問い続ける姿勢だ。

 あらゆる会社に衰退のリスクがあり、実際ほとんどの会社がいずれ衰退する。偉大な会社を築く起業家とそうではない起業家の違いは、良い時期も悪い時期もとことん警戒を怠らないかどうかだ。

 永続する組織をつくる最初のステップは「死なないこと」だ。だから常に十分な資金的バッファーを持っておくことが重要だ。安全余裕度を維持してリスクを抑え、経営の規律を高めていくことで、破壊的変化が起きたときには強く柔軟な状態で対処できる。危機の歴史をひもとくと、危機の前から規律ある経営をして強靭(きょうじん)であった企業と、危機の前から規律に欠け、脆弱だった企業との差が大きく広がることが分かる。同じパターンが今回の危機でも見られる。

 バーチャル、リモートワークへの移行など経営の実践方法は危機を通じて明らかに変わったが、企業経営の基本原則はほぼ変わらない。

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