仕事ではなく時間を管理する

 あなたの会社でもっとも不足している資源は、あなたの時間だ。ほかの資源はたいていどうにかして調達したり内製したりできるが、あなたの時間を調達あるいは内製することはできない。1日24時間しかないのだ。

 アッチテイ・エンターテインメント・インターナショナル社長のケネス・アッチテイは、時間管理と仕事の管理には重要な違いがあると説く。仕事は無限で、時間は有限だ。時間があればあるだけ仕事は増えていく。このため生産的になるほど、仕事ではなく時間を管理しなければならない。

もっとも重要な問いは「私は何をすべきか」ではなく「私はどのように時間を使うべきか」だ。

 順番がおかしいと思うかもしれない。だがよく考えれば、理にかなっている。あなたが組織のリーダーなら、やらなければならない仕事の量は無限に増えていく。すべてをやることは純粋に不可能だ。アッチテイは著書『Writerʼs Time(物書きの時間)』で、それを見事に説明している。

 あなたの仕事がうまくいけば、仕事はさらに増える。つまり「仕事を完了する」という概念そのものが甚だしい自己矛盾であり、誤った思考や習慣を助長してノイローゼを引き起こす危険がある。

 やるべきことをすべてやるのに十分な時間がない、と感じたことがないだろうか。ここではっきり言っておこう。やるべきことをすべてやるのに十分な時間がある人はひとりもいない(これからそうなる見込みもひとつもない)。私たちはこれからもずっと、日々やりかけの仕事を抱えたまま床に就くのだ。生産的な人生を送っている人は、やりかけの仕事を抱えたまま死ぬだろう。それでも(ここが重要なところだが)有効に使える時間は、本当はもっとたくさんあるのだ。時間を賢く管理すれば、毎日にまだ活用されていない生産的時間がたっぷりあることを「発見」するだろう。

 その第一歩は、あなたが実際何に時間を使っているか調べることだ。定期的にスケジュールをチェックし、どこに時間を割いているか分析しよう。最優先事項にきちんと時間を使っているだろうか。重要ではない活動に気を取られ、そちらに時間を取られていないだろうか。あなたのビジョンを強化するような活動、あるいは戦略の推進に直結する活動に主に時間を使っているだろうか。そうでなければ、十分集中していないことになる。

 自分を何かに強制的に集中させたいとき、効果的な手段がある。働く時間を減らすのだ。マリオット・コーポレーション創業者のJ・ウィラード・マリオットが、たった1店舗のレストランを大企業に成長させる際に役に立った哲学がある。「懸命に働け。1分1秒を無駄にするな。そして働く時間を減らせ。勤務時間の半分を無駄にしている者もいるのだから」

 ウィンストン・チャーチルは史上まれに見る多産な人生を送ったとされる。絵を描き、レンガを積み、動物を育て、社交にいそしんだ。一方、仕事中(たいてい仕事を始めるのは午後11時以降だった)はもっとも重要なことだけに集中した。

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