有能なリーダーは集中する。優先課題を最小限に絞り、脇目もふらずに専念する。すべてをやれる人間はいない。偉大な企業を目指す組織も同じことだ。
一度にひとつずつ
優先事項の短いリストを作成しよう。「短い」というところがミソだ。優先事項は一時期にひとつに絞るのが有効というリーダーもいる。ひとつに決めたら、片が付くまでそれに集中するのだ。どうしても複数になる場合でも、3つを超えないようにしよう。それ以上になるのは優先順位を決められないことを認めるのに等しい。
これを実践していたのが、シカゴマラソンを主催するスポーツイベント会社のエグゼクティブ・ディレクター、ボブ・ブライトだ。ブライトのトップ在任中に、シカゴマラソンは地域的な二流イベントから、世界記録が生まれる一流の国際イベントに成長した。成功の秘訣を問われたブライトの答えはシンプルだった。「ライフルをオートマチック・モードにしないことだ」
詳しい説明を求めると、ブライトはベトナム戦争に海兵隊員として9年間従軍した経験を語ってくれた。その間、多くの戦闘に参加した。おとり部隊を率いて、敵陣に攻め込んだこともある。そこで人生でもっとも大切な教訓のひとつを学んだという。
味方が数人しかおらず、周りを敵に囲まれたときにはこう言うんだ。「おまえはここからここまで、おまえはここからここまでをカバーしろ。銃はオートマチック・モードにするな。一度に一発ずつ撃て。パニックになるな」
同じことがビジネスにも言える。これは本当に重要なことだ。一度にひとつに集中すること。そうしなければ、さまざまな問題を抱えることになる。
戦場で部隊を率いることと企業経営を同列に論じるつもりはない。それでも一度にひとつのことに集中し、パニックにならないという基本は、生き馬の目を抜くベンチャー企業経営にも応用できる。これは「やることリスト」にひとつの項目しか書けないということだろうか。答えはイエスであり、ノーでもある。企業経営者として「やるべきこと」がひとつだけということは実質的にあり得ない。しかし時間の大部分は最優先事項につぎ込み、それが完了するまでは集中すべきだ。

Powered by リゾーム?