• 社員には「仲間をリスペクトせよ」と説いたが(HPがリスペクトの重要性を説いていたことを知識として知っていたからだ)、自分は決して仲間をリスペクトしなかった。チームワークを説いたが、Mにとってチームプレーとは自分への一方的な服従を意味した。

  • おそろしく優柔不断だった。重要な判断に直面すると、延々と分析し、行動を先送りした。そのために会社は大きな機会を逃し、小さな問題は重大な危機に発展していった。

  • 明確な優先順位を決めなかった。部下には常に10〜20のアクションを指示し、「すべてを最優先でやれ!」と言い切った。

  • 勤務時間のほとんどは、執務室の分厚い扉を締めて閉じこもっていた。社内を歩き回ったり、足を止めたりして部下の様子を見たりすることはめったになかった。

  • 常に部下を批判する一方、ポジティブな励ましの言葉は一度もかけたことがなかった。一度でも失敗すると、それを忘れなかった。部下が失敗から何を学んだか証明する機会を、決して与えなかった。

  • 会社のビジョンをきちんと伝えなかった。このため社員は、目的地もなく嵐のなかを漂う船に乗っているような気がした。

  • 話すときも物を書くときも、むやみに専門用語を使った。社員の意欲を高めるどころか、退屈させ、困惑させた。

  • 会社の成長が頭打ちになっても(売上高1500万ドル、社員数75人ほどのころ)、リスクをともなう新しい大胆な挑戦を拒んだ。会社は停滞し、野心的人材は会社を去った。

 Mの例からわかるように、偉大な企業への道を阻むのは往々にして無能なリーダーだ。どれほど最先端のテクノロジーがあっても、優れた戦略があっても、そして業務の遂行力があっても、リーダーシップ・スタイルがお粗末であればどうにもならない。これはあらゆる企業に言えることだが、とりわけ中小企業はその傾向が強い。というのも中小企業ではトップリーダーが日々与える影響が非常に大きく、また偉大な企業の基礎を据える役割を果たすからだ。

 要するに、破壊的リーダーシップ・スタイルの持ち主に、偉大な企業をつくることは不可能だ。

組織全体にリーダーの乗数効果が働く

 あなたが組織のトップなら、あなたのリーダーシップ・スタイルによって組織全体のトーンが決まる。つまり、良くも悪くも乗数効果が働く。トップのふるまいが、会社全体の行動パターンに影響を与える。あなたのスタイルが効果的なものならば、偉大な企業をつくる強力な推進力となる。

 一方、効果がない、あるいはネガティブなものならば、ぐっしょり濡(ぬ)れた重たい毛布のように会社を覆い、成長を阻むだろう。

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