DXを実現するためにはプロデューサー、マーケター、エンジニア、クリエーターの4職種を社内で育成すべきですが、現実にはかなり大変です。
そのため、まず鍵を握るのがプロデューサーの長であるCDO(最高デジタル責任者)の人選になります。守りのDXを推進するCIO(最高情報責任者)と違い、攻めのDXを推進する変革者です。
周りを固めるマーケター、エンジニア、クリエーターの長がそれぞれ、CMO(最高マーケティング責任者)、CTO(最高技術責任者)、CCO(最高クリエーティブ責任者)になります。
この4職種が経営陣の下で組織を構成することになります。
マーケッターは経営陣が描いたビジネスモデルをベースに、集客して売り上げを伸ばす重要な役割を担います。これまでは広告代理店に丸投げする企業も多く見受けられましたが、今後はSNS(交流サイト)活用のマーケティングも重要になるため、社内での育成が重要になります。
次にエンジニアです。エンジニアは大きく2種類に分けられます。一つはプログラミングを担当するエンジニアです。ウェブサイトやアプリなど、サービス設計を手がけます。もう一つがデータサイエンティストです。AIを活用して膨大なデータを分析し、事業に利活用する人材です。
最後にUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)を担うクリエーターです。ユーザーの接点はウェブサイトやアプリ、今後はIoT機器にも広がります。こうした接点でのUXを最高のものとし、満足度を向上させ、自社のファンになってもらう重要な役割を担います。
この4職種の役割を把握すると、社内の人材で構成するほうが圧倒的にスムーズであることが分かるでしょう。
ただし、こうした人材はどの企業も欲しており、不足しているのが現状です。弊社も人材育成プログラムを提供していますが、ほかにも次々と出てきています。こうしたサービスを活用して、自社の人材を育成し、内製化の体制を整えていくべきでしょう。
IoT時代に不可欠なデータサイエンティストの存在
今後、特に不足するとされているのがエンジニアの中でもデータ分析と事業への応用を担うデータサイエンティストです。海外では人材市場でも人気の職種となり、スキルを持つ人材が増えています。しかし、日本には現在、5万人程度しかいないといわれています。
日本政府は将来的に毎年卒業する大学生や高等専門学校(高専)生50万人の全員に、文理を問わず初級レベルの数理・データサイエンス・AI教育を課す計画を立てています。各大学で関連の学部や学科、講座が開講され始めているので、いずれ人材が輩出されてくるでしょう。それまでは、優秀なデータサイエンティストを様々な企業がシェアすることになると思います。
米国では「kaggle(カグル)」というデータサイエンティストのコミュニティープラットフォームが人気を博しています。企業や研究者がデータを投稿し、世界中のデータサイエンティストがその最適モデルを競い合うサービスです。
日本でもデジタルホールディングスのグループ会社であるSIGNATE(東京・千代田)が同様のプラットフォームを運営しています。3万人以上のデータサイエンティストが登録しており、様々なコンペティションが実施されています。
優秀な成績を収めたデータサイエンティストは、所属している企業内でも評価が高まり、昇給や昇格ができるといった好循環が生まれています。SIGNATEではデータサイエンティストの育成プログラムも提供しているため、自社エンジニアのスキルアップの場としても活用できます。
(この記事は、書籍『ZERO IMPACT ~あなたのビジネスが消える~』の一部を再構成したものです)
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