企業がまず取り組むべきは「守り」のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。守りのDXは、あらゆる組織が取り組むべきテーマ。欧米よりも生産性で劣っている日本は、まずは生産性を上げて欧米の水準に追いつくだけでも収益の改善が期待できます。
実際にやることは、「DXジャーニーマップ」を描くことです。顧客が商品・サービスを知ってから最終的に購買に至るまでのプロセスを描いたものを「カスタマージャーニーマップ」と呼びますが、それのDX版を描くのです。
そのためには業務プロセスの可視化が必要です。従来の業務プロセスを、問い合わせから、商談、受注、アフターフォロー、再受注までの流れに分解します。
例えば、人材派遣会社であれば、求職者への宣伝広告、問い合わせの受け付け、面談、採用、企業への派遣、フォロー、派遣の完了、次なる職のあっせんといった一連の決まった業務フローがあります。その流れをジャーニーマップに落とします。
次に、それぞれの業務においてどのITツールに置き換えると、どの程度のインパクトをもたらすのかを試算します。
こうした業務効率を高めるツールは数多く出ています。その中から、自社の事業領域や事業規模に最も適したツールを選択すればよいでしょう。それぞれの業務がどういうツールで効率化できるかを当てはめていけば、業務プロセスのデジタル化を体系立てて進めることができます。
例として、無人レジを挙げてみたいと思います。最近では日本のコンビニでも導入が広がっている無人レジですが、弊社が入居するビルの1階のコンビニでも有人レジに加えて無人レジが設置されました。慣れている人は並ばずに次々と無人レジで会計を済ませています。
今後は米アマゾン・ドット・コムが運営する決済レスコンビニ「Amazon Go」のように、入店時に一度スマートフォンをかざすだけで棚から商品を手に取って店を出るだけで、自動的に決済が終わるといった体験も広がるでしょう。
ユーザーにはこれまで以上の利便性が提供され、店舗側は人件費削減と効率化が図れるという、双方にメリットがもたらされます。
弊社グループで手がけたケースもご紹介しましょう。
保険会社のコールセンターを、従来の電話対応からメッセンジャーアプリ「LINE」を使ったチャット対応へと移行するサポートを行いました。数億円規模でコスト削減につながっているほか、ユーザー側も電話対応よりもチャット対応を希望するニーズが高まっていることもあり、顧客満足度向上につながっています。
従来の電話対応の場合、保険金の請求書や損害物の写真は別途郵送する手間が発生していました。こうした手間もLINEを使えば効率化できます。企業にとっても、顧客にとっても、利便性が格段に上がった例といえます。
これらはほんの一部の事例です。あらゆる業務プロセスはデジタル化することで必ず効率化されます。唯一の注意点を挙げるとすれば、ツールの導入で終わってしまい、運用フェーズまでいけず、逆にコストアップになってしまうケースです。こうした点に注意しながら取り組めば、守りのDXは理論上、会社の収益を改善します。
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