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 米国では、そもそもこの40年で貧富の差が広がっていました。1980年以降、政府による個人や市場への介入は最低限とする新自由主義が台頭した結果ともいわれています。

 企業にとってのステークホルダーは顧客、従業員、株主など様々ですが、特に株主の利益を優先する動きが強まっていました。企業の成長と従業員への報酬が比例していれば問題ないのですが、株主を最優先のステークホルダーと定めると、従業員の給与を抑えたほうがよいわけです。

 日本でも、この十数年を振り返れば正社員から契約社員や派遣社員に切り替える企業が増加したことは記憶に新しいでしょう。現場で働く従業員の報酬を低く抑えつつ、企業の業績向上を図る。株を保有する富裕層はさらに資産価値を増やし、貧困層は苦境にあえぐという構図です。

 新型コロナウイルスの感染拡大によってGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック=現メタ、アップル)の時価総額は異常なほどの上昇を見せました。

 他方、対面でのサービスが求められてきた飲食店をはじめとするサービス業は大打撃を受けました。飲食店が事業を続けられず、収入が途絶える人たちも出ています。

 こうした格差をどう是正していくのか。静観してしまえば、資本力の乏しい中小企業や地方の零細企業は姿を消す可能性があります。多様性が失われ、画一的なサービスに収れんし、地方経済は自立が難しくなります。結果、国全体の活力は失われていくでしょう。

 コロナ禍はこれまで目をつむってきた格差問題を顕在化させ、人類に突き付けているのです。こうした格差問題に対する一つの解決策として、後述するベーシックインカムが挙げられます。

画一的な働き方の多様化が進む

 新型コロナによって身近で最も大きく変化したことは働き方かもしれません。在宅勤務、リモートワーク、時差通勤、シェアオフィス、ワーケーションなど、多様な働き方が広がっています。満員の通勤電車を避けるだけでも心身の負担が減るほか、通勤にかかる時間を別の有益な用途に使えるようになりました。

 オフィスに常時出社する社員は大幅に減らせるため、全社員分の席を確保する必要がなくなりました。どの席に座って業務してもいいフリーアドレス制度を導入する企業が増えたほか、ミーティングしやすいスペースやリモート会議に参加しやすい席を新設するなど、オフィスのレイアウトを変更する企業も出てきています。

 コロナ禍で通勤がままならない現状を逆手に取り、未来につながる働き方に変えようとする企業が増えているのは大きな変化です。

 さらに、リモートワーク拡大に伴って副業を解禁する企業も増えてきています。筆者が代表取締役会長を務めるデジタルホールディングスでも2020年10月、副業解禁に踏み切りました。社内だけでなく社外を向いて様々な接点を持つことで、一人ひとりの能力が磨かれると考えてのことです。

 解禁時に申請した社員は50人ほどでしたが、今後はどんどん増えていくものと考えています。実際、若手の中にはユーチューバーとして活躍する社員もいれば、インスタグラムで人気を博すインスタグラマーとして活動している社員もいます。

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