ここまでは過去の産業革命で必ず大きな変化が起きたインフラ3分野を見てきましたが、それ以外でもコストがゼロに近づく例が今後、出現するとみています。
例えば、新型コロナウイルスで大きな影響が出そうな代表例として不動産業界があります。不動産の価値が大きく変動し、住居費もまたゼロに近づく可能性があります。都心で暮らす人にとっては、住居費の高さは大きな負担となっています。過去60年間は一貫して地方から都会へ、東京一極集中と地方の過疎化という流れでしたが、新型コロナの影響で、住まいやオフィスを郊外や地方に移転する人が増えています。
新型コロナのまん延はリモートワークを促進させました。これまで当たり前とされてきた通勤の必要性がなくなり、どこで勤務をしてもいい企業が増えています。
特に、IT業界ではリモートワークに抵抗なく移行できている企業が数多く見受けられます。
日本では悪しき慣習として満員の通勤電車地獄がありましたが、リモートワークを実施している企業にとって、もはや過去の話となりました。
自宅を郊外や地方に移す人も増えているようです。筆者の周囲では新潟県や長野県に引っ越した知人もいますが、そこまで大胆な移住はまれ。小田原など新幹線で通勤できるエリアや、鎌倉や逗子など電車を使えば1時間程度で行ける自然豊かな環境に住まいを移す人が増えています。
新型コロナがまん延する前から、700人を超える従業員全員がリモートワークで働いている企業がここ最近、脚光を浴びています。企業のリモートワークを支援するキャスターというベンチャーです。
東京で上場企業の秘書として働いていた人が、家庭の事情などで地方に転居したとします。しかし、キャスターのサービスを利用すれば、地方に住みながら東京の企業の秘書業務をオンラインで代行できるのです。本人にとってはキャリアを生かすことができますし、採用企業にとっては質の高い秘書サービスを格安で受けられます。
さらに、キャスターが大胆なのはコロナ禍が始まる前、2019年9月に自身の本社を地方に移転したことです。それまで、東京都港区の南青山の拠点を本社としていましたが、宮崎県西都市に移転しました。

このように、今後はオフィス、働く場所、住まいのそれぞれが東京一極集中から、郊外や地方へと流れが一転する可能性があります。
この流れに地方自治体も目をつけ、積極的な誘致活動が始まっています。広島県では本社の移転を条件に最大2億円の補助金を付けるキャンペーンをいち早く始めましたし、長野県や栃木県などでも様々な支援が始まっています。
都会で働く意味を見直し、自然豊かで土地も安い地方や田舎で暮らす選択肢が取りやすくなりました。これまで都心への一極集中が進んでいた流れを大きく変える分岐点といえるでしょう。
空き家が秘める可能性
さらに、大きな可能性を秘めているのは空き家です。過去、都心への一極集中と地方の過疎化の影響で、日本国内に存在する空き家は800万戸を超えています。
活用されていない空き家に住む場合、無料で住めることもあるかもしれませんし、家賃を払うにしても都心に比べれば格安で済むでしょう。現に、移住者に空き家を無料で提供する自治体も出てきています。
これまでは仮に無料で提供されても、仕事の種類によっては物理的に田舎での仕事は難しいケースがほとんどでした。しかし、コロナ禍を機に広がったリモートワークのおかげで、物理的な場所の制約はなくなりました。
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