携帯電話料金がついに無料へ

 ほかの2分野に先行して無料化がすでに始まっている領域が、通信コミュニケーション分野です。時代を遡れば、国際電話はかつて1分数百円と極めて高額なサービスでした。現在ではLINEやSkype、Facebook Messengerといった様々なコミュニケーションツールを利用することで、どこにかけても無料通話が当たり前になりました。加えて、昔は夢物語のように語られていた動画によるコミュニケーションも、現在では無料で利用できます。

 高止まりしていた国内の携帯電話料金も、菅義偉前内閣が強力に推進した結果、2021年春から大幅に下がることになりました。口火を切ったのは、NTTドコモです。2020年12月、新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表し、携帯電話大手3社の値下げ競争が始まりました。

 ソフトバンクグループやKDDIが追随する中、衝撃的だったのが業界最後発の楽天モバイルです。

 21年4月からの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」では、通信量が1GB(ギガバイト)未満の月額料金を0円に設定しました。専用の「Rakuten LINK」アプリを使えば、国内通話も無料でかけ放題です(一部対象外番号あり)。

 販売奨励金を使って携帯電話端末が0円で入手できることは過去にもありましたが、条件はあるものの通信料・通話料ともに無料になるのは初めて。業界に相当なインパクトを与えました。

 楽天グループが携帯電話事業参入を決めた際、同社の三木谷浩史会長兼社長に話を聞いたことがあります。「このタイミングでの参入、勝ち目はあるのでしょうか?」と聞いた筆者に対し、「昔ながらの携帯電話事業者の技術を新しい技術で置き換えれば、設備投資が大幅に安く済むため、従来とは異なる価格帯でサービスを提供できる。勝てると確信したからこその参入だ」とはっきり答えました。インドや欧州、南米など世界中の新興携帯電話事業者の話を聞きにいったことで得られた知見なのだそうです。

 我々利用者には見えないバックグラウンドの技術革新も続いています。楽天モバイルの場合、仮想化技術を用いることによってソフトウエアとハードウエアを分離し、ハードウエアを専用機器ではない汎用機器で構成しています。当然、ネットワーク構築にかかるコストは大幅に削減でき、それが料金体系に反映されているわけです。

(この記事は、書籍『ZERO IMPACT ~あなたのビジネスが消える~』の一部を再構成したものです)

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