コロナ禍が早めた時計の針
筆者が代表取締役会長を務めるデジタルホールディングスでは、早いグループ会社で3月から、グループ全体でも4月から約1500人の社員全員が在宅勤務となりました。2020年5月末の緊急事態宣言解除までの約2カ月間、出社もままならない状態を体験しました。
新型コロナを受け、リモートワークは一気に普及。当社はオフィスの3分の1を4月早々に解約しました。その後、緊急事態宣言解除後も会社への平均出社率は全社員の10%程度にとどまり、筆者も含めて社員の働き方は大きく変わりました。
出張など移動が伴う業務は極端に減り、ビデオツールを用いた会議が顧客にも浸透したことで、移動時間の短縮を一気に図れました。また、ワーケーション(ワークとバケーションを組み合わせた造語)を取り入れたり、副業を全面解禁したりするなど、働き方改革もまた一気に進展しました。
周囲を見てもシェアオフィス活用が増え、自宅を都心から自然豊かな郊外に移すことを検討する人も出始めました。避暑地として有名な栃木県那須町のデベロッパーから、「昨年まで別荘地の購入は年間20~30件だったところ、2020年は毎月20~30件のペースに増えている」という話を聞きました。働く場所や時間の制限がなくなり、未来の働き方を示唆してくれました。
また、多くの方が自宅にこもる中で、不用品を捨てたり物々交換したりして片付けを実施。今まで良しとされてきた大量生産・大量消費社会を見直すきっかけともなりました。本当に大切なことは何かを考えさせられ、地球温暖化対策など地球全体、人類社会の未来のあり方が問われました。
2020年には住民基本台帳に記録されている人を対象に一律10万円の特別定額給付金が配られました。まるで、生存権保障のために政府が一律の給付金を配布する政策構想「ベーシックインカム」を思わせる施策です。これもまた、マー氏が予言する未来の一端を経験したと考えています。
コロナ禍は多くの人に不幸をもたらしていますが、同時に、時計の針を一気に進めた世界を人々に見せてもいます。
(この記事は、書籍『ZERO IMPACT ~あなたのビジネスが消える~』の一部を再構成したものです)

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