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 いよいよ起業に向けて、本格的な準備が始まります。高校時代から、いつか一緒にビジネスをしたいと思える仲間に目をつけていました。会社員最後の1年を迎え、彼らに声をかけ始めました。20名ほどのうち、起業に興味を持って集まってくれたのが5名。その5名のメンバーでビジネスアイデアを出し合う起業勉強会を隔週で始めました。

 ただ集まるだけだとメリハリがないので、毎回一人3000円ずつ出し合い、そのお金を資本金にすることにしました。とはいえお金はないので、とにかくお金のかからない、始めやすいビジネスを条件にアイデアを考えていったのです。ときに、「満員電車の席取り代行サービス」なんて突拍子もないアイデアも飛び交いました。

 最終的に目をつけたのがダイレクトマーケティング。米国でダイレクトマーケティング市場が急速に伸びている、マスマーケティング市場を抜く勢いだという情報をキャッチします。当時、日本ではテレビ、新聞、雑誌、ラジオのマスマーケティングが圧倒的で、ダイレクトマーケティングといってもテレマーケティングぐらいしかありませんでした。

 新参者でも勝機が見込める、大手がまだ参入していない領域を選んでいき、たどり着いたのがFAX(ファクス)を使ったダイレクトマーケティングでした。ファクス番号をとにかくかき集め、業種や会社規模などの切り口でデータベース化し、BtoBの販促メディアとして1994年に創業したのがデカレッグス(1995年にオプトに社名変更)です。

 起業1年目は、売り上げは150万円ほどで、給料もゼロ。毎日のように会社に泊まり込みでしたが、とにかく楽しかったことを覚えています。中学生のころからの夢であった起業がとにもかくにも実現できたのです。一瞬でも決意を迷わせたあの都市伝説を打ち破るためにも、会社存続に向けてがむしゃらに働きました。

インターネットとの出会いと第二の創業

 起業したからにはいつか上場したい、そんな思いを抱いていました。ファクスのダイレクトマーケティング事業で上場する予定で事業計画書を書き、VCからも資金調達していました。それでも3、4年ほど事業を続ける中で、この領域では市場の限界があり上場に至るまでの規模に達しないことが、実感として分かり始めました。

 そんなときに現れたのがインターネットです。デカレッグスを創業した1994年は、まだインターネットの黎明(れいめい)期。当時はこれからインターネットの時代が来るといわれていたものの、まだユーザーも少なく、その可能性は未知数でした。その後、わずか数年の間に利用者が急増し、インターネットが起こす革命が徐々に現実味を帯び始めました。

 ベンチャーを立ち上げてから痛感していたのは、大企業との資本力格差です。大企業に対抗しようとしても、資本力では勝てないことは分かっていました。銀行を例に挙げれば、全国に支店網があり、何万人という行員が配属されています。これに対抗しようとしても、資本力で劣るベンチャーが、同じ方法で勝つことはできません。

 一方、インターネットによって実現するオンライン専業銀行やオンライン専業証券は、店舗や行員が不要で、従来のコスト構造をがらりと変えられる可能性がありました。低コストでサービスを提供できるのであれば、大企業とも十分に対峙できます。インターネットがもたらした「新しい勝利の方程式」は、資本を持たざる者に可能性と夢を与えてくれました。

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