一方で、GAFAの時価総額を合計すると一国のレベルを超えています。各国はGAFAに対する規制を強めたり、課税強化を進めたりしています。

三木谷氏:税金がなければ国は運営できません。デジタルに国境がないことで起こる税金の問題をどう解決するかは一つの課題ですよね。個人的には、法人税や所得税もなくし、消費した場所ごとで全て消費税として徴収するくらいしか解決策が思いつきません。

 資本主義の本質は、お金は回るものであるということです。日本でもうけたお金を、実業家が使い道を決めるか、役人が税金として吸い上げて決めるか、どちらがいいかといえば前者ですよね。GAFAについてはある程度の競争状況がつくれないと、「Apple税」ともいわれるApp Storeの手数料の問題のように、独占的な価格コントロール権が生まれてしまいます。これらに対する規制はやるべきです。

 要するに競争環境を国単位で導入していく必要があります。競合の肩を持つのもどうかと思いますが、アマゾンがものすごく競争環境をゆがめているかといえばそうではないと思っています。市場環境をゆがめているのはグーグル、アップル、フェイスブックです。この3社については規制が必要だと思います。

 本来であれば日本の公正取引委員会が、巨大なGAFAに立ち向かわなければいけないはずです。それなのに、怖気づいているのか何もできていない。一方、欧州は強気に立ち向かっています。日本は敗戦国のメンタリティーをそのまま引きずっています。このままでは日本はGAFAに制圧されますよ。

規制については新経済連盟でも発信していますね。

三木谷氏:発信してロビイング活動をしても、結局のところ国も役人も、世界観や未来感がないから、分からないんですよ。細かいミクロでしか理解できていない。だからこんな体たらくになってしまった。

 でも、日本にもまだよさが残っています。十分、間に合います。ただ何もせずにいると、このままでは二流国どころか三流国に成り下がります。

日本に対しての危機感をベースにお持ちですよね。日本を離れる選択肢も取れると思いますが、日本への強い思いが意外にも見えます。

三木谷氏:国というよりは、日本というコミュニティーに対する思いでしょうか。国という単位が今後どうなるか分かりませんが、自分が生まれ育った日本社会には輝いていてほしいと思っています。

幸せをもたらすテクノロジーの進化

最後に、テクノロジーの進化について三木谷さんのお考えをお聞かせください。テクノロジーは人に、そして世の中にどのような影響を与えていく存在なのか。

三木谷氏:テクノロジーは、人を幸せにする存在です。過去を振り返っても未来を見据えても、その存在価値は変わらないでしょう。

 蒸気機関がなかった時代と現在を比較して、どちらが幸せでしょうか。テクノロジーに支配されている現在より昔のほうが幸せだったという考え方もあるかもしれませんが、少なくとも貧困に苦しむ人数は減り、飢饉(ききん)で命を落とす人数も減っています。

 今ほどテクノロジーが発展していない世界で、仮に今回の新型コロナウイルスが発生していたら、死亡者数は5億人、10億人まで膨れ上がっていたかもしれない。

 人類が生存し、発展していくためにテクノロジーは必須であると思います。それは当然、ITにとどまりません。バイオサイエンスや環境保全を含めたエネルギー領域のブレークスルーが、自然界に人類が適応していくためにも極めて重要になるでしょう。

 テクノロジーが人類にとって幸せかどうか、その議論自体にはあまり意味がない。

 いずれにしても発展していくものなのです。どうせあらがえないのであれば、テクノロジーの進化の先端にいたほうがいい。

(この記事は、書籍『ZERO IMPACT ~あなたのビジネスが消える~』の一部を再構成したものです)

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