デジタル庁のような取り組み自体についてはどう捉えていますか。
三木谷氏:意味はあると思いますが、それで本当に公務員の数が減らせるのでしょうか。銀行でよくある、新しいシステム導入の結果、人が増えるといった本末転倒なことにしてはいけません。デジタル化による具体的なメリットについての議論が必要です。
マイナンバーカードと運転免許証が一体になることで削減できる免許更新のコストや、健康保険証と一体となることで削減できる年金管理のコスト、それらが経済に与える影響についてまで、議論されているでしょうか。マイナンバープラットフォームをつくったとしても、利権が複雑に絡むでしょうから相当な覚悟がないと実現は難しいとは思います。
確かに新型コロナウイルスによって国への依存度が急速に高まっている印象があります。本質的には民間が主導する体制に戻す必要があるのでしょうか。
三木谷氏:菅義偉前首相は「自助、共助、公助」を掲げましたが、この「自助」への批判が強かった。私はあくまで基本は独立自尊だと考えます。日本の産業界や実業界全体に「他人に頼るな」という気概がなくなってきている気がしています。NTTの再編論も、日本電信電話公社に先祖返りするようなものです。
なぜだろうかと突き詰めていくと、大きな財政赤字を抱える中でも、お金をばらまいたほうが自民党の票が取れるからじゃないですかね。
小泉政権のときは竹中平蔵さんによる明確な経済ビジョンがあった。最近は確かにコロナで仕方がないにしても、ポピュリズムが暴走すると大変なことになりますよ。
ビジョンもないし、レベルが落ちてきていると感じています。グローバルな視点を持った人材も減っている。大学教育に関しても、専門教育の前にもっと教養レベルを上げる必要があると文部科学省にずっと提言し続けています。ロボットばっかりつくっても仕方ない。大学ごとに専門性について得点をつける議論もありますが、そんなことをやっていても海外にはかないません。
GAFAと戦うために必要なこと
よく新経済連盟を立ち上げましたよね。経済団体を一から立ち上げて政府に提言している。
三木谷氏:新経済連盟のために楽天を経営しているという考え方もあります。やはり、日本をよくしたい。政府を変えるのではなくて、アントレプレナーを生み出す大きな基盤をつくりたいのです。それをしない限りは、GAFAに勝つなんて夢の話です。
GAFAに対抗するには日本に優秀な人材を集める必要があります。楽天モバイルも一つのブレークスルーになると思っています。そういう意味でも社運をかけてやっています。
世界で初めてのチャレンジングな経験を求めて、優秀な人材が集まってきていると。
三木谷氏:米グーグルや米ベライゾン・コミュニケーションズ、米アマゾン・ドット・コムの出身者など、世界レベルのエンジニアが集まっています。彼らはチャレンジングな経験を求めているので、給料が下がっても入社してくれる。魅力あるプロジェクトには、魅力的な人材が集まります。
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