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 国内EC(電子商取引)市場でインターネットの黎明(れいめい)期から今なお、存在感を示し続ける楽天グループ。国内プレーヤーが軒並みGAFAに一掃されていく中、気を吐き続ける数少ない日本企業の一つだ。

 EC事業から始まった楽天だが、現在ではクレジットカード、銀行、証券、保険、メディア、スポーツなどに事業を拡大し、巨大な経済圏を築き上げている。最近では第4の勢力として携帯電話事業へ参入した。これからの20年でデジタル産業革命はどのような変化をもたらすのか、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏に話を聞いた。(同対談は2021年1月に行われたものです)

楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏(左)と著者(写真=竹井俊晴)
楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏(左)と著者(写真=竹井俊晴)

今まさしく、デジタル産業革命に突入しています。三木谷さんは、この先の未来をどうみていますか。これから20年、30年後の社会は、どのように変わっていくのでしょうか。

楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏(以下、三木谷氏):全てが変わるでしょうね。変わらない国や社会はどんどん遅れていってしまう。

 私は未来を考えるとき、常に国という「ユニット」や本や放送などの「フォーマット」といった単位で捉えるようにしています。電子書籍とウェブサイトはどう違うのか、ディスタンスラーニング(遠隔学習)と物理的に教室で受ける授業では何が違うのか。そういった単位で考えていくと、何が変わるかというより何がこの先変わらないのかと考えたほうが未来を予測するには早いかもしれません。

ほとんどのユニットやフォーマットが変わってしまうということでしょうか?

三木谷氏:そうです。20年もあれば、自動運転は当たり前になっているでしょうし、インターネットの世界では、言語圏が勝敗を分ける側面があるため、日本企業が世界を席巻するのは難しいのが現実。プラットフォーム戦争では米国勢が圧倒的に有利です。

 紙幣も完全に姿を消しているでしょう。また、その20年の間に、量子コンピューティングのようなテクノロジーのブレークスルーが起きた場合、予想される変化にどのような影響をもたらすのかも同時に考える必要があります。現時点の想定よりも、さらに高速な変化を起こす要因が現れた場合、どんなリスクが発生するのかということです。

今回の新型コロナウイルスの影響については、どうお考えですか。

三木谷氏:前提として、日本はこれまでデジタル化への躊躇(ちゅうちょ)がありました。途上国と比較しても、メンタル面ではどの国よりも遅れていると思います。旧型のアナログなシステムが中途半端によかったため、変化に対するブレーキがかかってしまっていたのです。

 中国のように強引に進めているわけでもなければ、米国のようにイノベーションに対して州単位でのフレキシブルなルールを作れる環境にもありません。ましてや、新興国のようにこれまでなかったものをつくっていこうという気概もありません。

 日本や欧州のいくつかの国は、非常に中途半端な環境にいたわけです。極めて危機的な状態です。

 それが新型コロナによってディスタンスラーニングや在宅勤務を経験したことで、変化の方向性に対する確信が得られましたよね。

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