携帯翻訳機「ポケトーク」関連事業の分社化を決めたソースネクスト。2024年中をめどに東京証券取引所への上場を目指すとしている(関連記事:翻訳機「ポケトーク」上場へ)。
急成長を続けていたポケトークは新型コロナウイルス禍による海外旅行客激減で大きなダメージを被った。だが、その後、脱ハードウエア戦略を推進。リモート会議ツールとの連係機能を強化し、端末不要で翻訳機能を使える「ポケトーク字幕」を発表した。
このタイミングで分社化という決断を下した理由は何か。ソースネクスト会長兼CEO(最高経営責任者)の松田憲幸氏に話を聞いた。

「ポケトーク」を分社化して2024年をめどに上場を目指す方針を決めた。背景を教えてほしい。
松田憲幸・ソースネクスト会長兼CEO(以下、松田氏):SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が隆盛を極める米シリコンバレーでは、多くの企業が「ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)」を指標として用いている。ソースネクストの事業でARRで計るビジネスはこれまで少なく、サブスクリプションモデルへの事業転換を急がなければと考えていた。
新型コロナウイルス禍で海外旅行が激減し、翻訳専用端末「ポケトーク」は大きなダメージを被った。その後、リモート会議との連動機能を拡充したソフトウエアの「ポケトーク字幕」を発表した。このプロダクトに非常に大きな手応えを感じ、大きな事業に育てられると確信するに至った。
分社化の判断はいくつかの合理的な理由による。まず、ポケトークの事業だけがソースネクストの中で浮いていたこと。唯一、グローバルで売れていたプロダクトだった。特に米国ではコロナ禍でも非常に好調な売り上げを記録していたし、知名度はソースネクストよりもポケトークの方が圧倒的に高かった。
また、分社化した方が資金も集まるし、人材も集まる。企業の成長を決めるのは「人」と「お金」。加えて、製品名と会社名が一致することの効果も大きい。プロモーションも非常に分かりやすくなるためだ。
結果的に分社化という選択肢が最も合理的な判断になると踏んだ。
多くのスタートアップが今、グローバル市場を目指して頑張っている。一方、ポケトークは既に米国や欧州で受け入れられているというアドバンテージがある。米国では広告宣伝をしていないにもかかわらず、オーガニックな伸びを見せている。きちんと人を採用し、資金を投下し、さらにグローバルなプロダクトにするチャンスだと感じた。
新会社の出資比率はどうなるのか。
松田氏:設立当初は100%をソースネクストが持つ。今後の投資ラウンドで出資比率を下げていき、上場した後は50%を切る予定だ。24年に日本でプライム市場への上場を目指すが、今後の各国の売上構成比次第では最終的に米ナスダック(NASDAQ)市場への上場も視野に入れる。
ポケトークの今後の展開は。
松田氏:専用端末でもリモート会議システムでも、どこでもポケトークが使える世界をつくり出していく。新会社設立と同時期になると思うが、22年2月を目標にスマートフォン向けのアプリをリリースする予定だ。
日本、米国に続いて欧州市場に力を入れていくつもりだ。その後、アジア市場を狙う。専用端末を前提として事業を展開してきたが、当然、物理的な端末は各国の認証が必要になる。だが、ポケトーク字幕のようなソフトウエアは認証が不要。スピード感を持ってグローバル展開を進められるメリットがある。
Powered by リゾーム?