海外の大学と日本の大学では寄付金の額が現状、大きく異なる。そもそも日本に市場は存在しているのか。
中沢氏:海外の大学寄付金市場について調べていた過程で、寄付金を増やすためのSaaS(サース)が海外に数多く存在していることに驚いた。それだけ市場が大きいということだ。
一方、日本では決済プラットフォームはあるものの、寄付金業務に関連する業務管理ツールは存在せず、マーケティングツールもなかった。であればと、ツールの開発を始めたものの、既に市場が存在しているか否かの違いは大きかった。
米国や欧州では寄付金業務に携わるプロフェッショナルが数多く存在し、システマチックに運用されている。ツールを使いこなすだけの体制があるわけだ。
一方、日本で同じようなものをつくっても、そもそも大学が寄付金収入を重視していないためツールを使う予算を割いていない。当初はSaaSだけで事業を成立させようと考えていたが、やはり実務支援や業務効率化のための自動化ツールなど、地道なところから進めていこうと途中で方針転換した。
少子高齢化が進むのは確実で、大学側も何かしらの手を打たなければならないはずだが。
中沢氏:すべての大学が厳しい状況に陥っていくはずだ。少子高齢化が進み、入学者そのものが減っていくのは確実だ。
2004年には全国の国立大学が法人化した。文部科学省は年々国立大学法人運営費交付金を減らしており、大学自身で稼いでもらう体制へと変わりつつある。
だが、日本の大学の方針はグローバル化に比重が大きく置かれ、経営強化の比重は決して大きくない。グローバル化に力を入れることで世界ランキングが上位に上がり、国からの評価も上がって支給される補助金も増えるという仕組みになっているためだ。
もちろん経営強化をほとんどの大学総長は公約に掲げている。だが、大学総長が見るべき領域は幅広く、経営強化はあくまでも公約の柱の1本にすぎない。そのため、寄付金は重要だという認識はあっても、専門部署の設置にとどまり、人員も予算も多くは割かれていない。
例えば、海外大学であれば大学の資金集めのプロフェッショナルは年間でゆうに1億円以上を稼ぐ。インセンティブとしてきちんと給与にも反映される仕組みになっている。
日本の大学が今後取るべき対応は。
中沢氏:正直、米国の大学のように寄付金集めを担当する部署に400人近くの職員を割くというのは現実的ではない。少人数でも、小さくてもいいので確実に成功事例を積み上げていくことが大事だ。これだけの取り組みをしたらこれだけ寄付金が増えるという実証を重ねていくことだ。
日本の大学でも十分に実証できたら、国の政策もより明確になるはずだ。最終的に目指したいのはファンドレイザー(資金調達を専門とする職業)が各大学にいる状態。それを支援する立場としてAlumnoteの事業を拡大できればと考えている。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
この記事はシリーズ「Xの肖像」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?