コロナ禍で世界は「変わった」

コロナ禍を経て、何が変わったか。

 コロナ禍のさなか、世界は元には戻らないだろうなと漠然と思っていた。結論からいえば、「戻る」というよりは「変わった」。企業も人に対する考え方が変わり、働く側もまた考え方が変わった。

 Timeeの利用者を見ると、学生比率が大幅に下がり10%程度になった。半面、何かしらの企業で正社員をしている人の比率が25%に増えた。これは副業の流れが広がったためだとみている。正社員で月給5000円を上げるのは難しいが、Timeeを利用すれば可能だ。

 リモートワークも定着するだろう。同じ場所に集まって働くのではなく、分散する。伴って、消費の場所も分散していく。働き方も1社にこだわるのではなく、パラレルに働ける場を持つことが当たり前になるだろう。

 企業側も労働力の流動性を考えたポートフォリオマネジメントをしていくのではないかと思う。Timeeの顧客は労働集約型の飲食店や物流企業。いうなればDX(デジタルトランスフォーメーション)があまり進んでこなかった業界だ。Timeeが初めて使うITサービスだという顧客もいる。タイミーは雇用する側、雇用される側の両軸からDXを推進していければと考えている。

21年9月に大型調達を実施した。

 2020年9月までに物流施設大手のプロロジスや肥後銀行、肥銀キャピタル、近鉄ベンチャーパートナーズ、ミクシィ、global bridge HOLDINGS、コロプラネクストなどから13億4000万円を調達した。このときの調達はコロナ禍がいつまで続くか分からない中での守りの調達だった。

 今回の調達は攻めの調達だ。来夏にはコロナ禍が落ち着いて飲食業界にもにぎわいが戻っているはずだ。そのときのためにもしっかりとマーケティングに力を入れ、人的リソースにも投資しなければならない。資金力としてバッファを持ち、未来における機会損失をなくしたい。

 コロナ禍で忘れられがちだが、新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する前、日本では毎日のように人手不足が叫ばれていた。飲食店が活気を戻してきたら、それこそ全業種で人手不足がまた顕在化するだろう。

 休業を余儀なくされた飲食店の多くは、泣く泣く雇用を切らざるを得ない状況に追い込まれた。これから飲食店が盛り返していく中で、アルバイトリーダーから育成を始めなければならなくなる。人材の「量」だけでなく「質」も求められていく。一定の即戦力が欲しいというニーズは急激に高まるはずだ。

 人手不足による倒産は避けなければならない。タイミーが担うべき使命と考えている。

 タイミーは人材系企業と見られがちだが、立ち位置としてはシェアリングエコノミーの領域だ。ハイヤー配車サービスの「Uber」や民泊仲介大手の「Airbnb」では、乗車したい人と空いているハイヤー、宿泊者と遊休スペースをマッチングしている。シェアリングエコノミーでは常に需給が変化する。誰に何をレコメンドすればうまくマッチするか。

 Timeeは働く時間をシェアリングしている。需給バランスを取らなくてはならない領域に対して、タイミーは威力を発揮したい。そのためにも、調達した資金をテクノロジーへ投資していく。

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