面接なしで働きたい人と働いてほしい事業者側をマッチングする「Timee」。新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店が休業を余儀なくされる中、Timeeを運営するタイミー(東京・豊島)もまた大ダメージを受けた。一時は売り上げ構成比の8割を飲食店に頼っていたためだ。

 だが、反転攻勢に出ている。9月15日にはシリーズDラウンドとして、Keyrock Capital Management、Kadensa Capital、Seiga Asset Management、THE FUND、伊藤忠商事、KDDI Open Innovation Fundを引受先とした計40億円の第三者割当増資を実施。加えてみずほ銀行をはじめとする大手金融機関から13億円を借り入れた。

 10月15日には元ディー・エヌ・エー(DeNA)社長の守安功氏を取締役COO(最高執行責任者)として招へいしたと発表。タイミーの小川嶺社長に話を聞いた。

タイミーの小川嶺社長(写真=的野弘路)
タイミーの小川嶺社長(写真=的野弘路)

コロナ禍で受けたダメージから復活して反転攻勢に出ている。

 2020年2月から7月まで売り上げを大幅に減らした。それまでのタイミーは飲食業に頼り切っていた。自分たちとしてどこに注力しなければならないのか、どうすれば生き残れるのか。真剣に考える必要があった。事業そのものをピボット(転換)するわけにはいかない。そこに投資をいただいているからだ。

 非常に難しい局面に立たされた。結果的に行き着いたのは自分たちのビジョンは何か、ミッションは何かをもう一度考えるということだった。Timeeを通じて人生の可能性を広げてもらいたいと思ったし、何かにチャレンジして仮に失敗したとしてもTimeeがセーフティーネットとしての存在になりたいと思った。

 コロナ禍でもう一度自分たちの使命について考えられたのは大きい。「一人一人の時間を豊かに」をビジョンとして掲げ、「働くを通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに決めた。

 飲食店にこだわり続けるのが正解ではないと気づいてからは行動を急いだ。人が集めづらい業種をピックアップして、一つひとつ的確にアプローチしていった。結果、商機を見いだしたマーケットとして物流市場がある。たまたま物流企業の1社がTimeeを使ってくれていた点も大きい。物流市場にはもともと繁忙期と閑散期があり、需給バランスを取るのが難しい。

 求人媒体を使った採用の場合、企業側が募集をかけ、応募してきた人を面接し、採用しても半年で辞めていくといったことが普通に起きている。タイミーではTimeeを使って働いている人を企業側が評価し、直接採用する行為を無料にしている。こうした点も評価されているのではないかと思う。

 コロナ禍から脱しつつある米国は有効求人倍率が上がっている。ゼロから研修してというよりも一定の戦力になる人をすぐさま採用したいというニーズが高まっている。こうした動きは日本でも活発化するだろう。

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