メルカリが一つの節目を迎えている。

 メルカリは2018年6月の上場後、フリマアプリ「メルカリ」の国内事業と海外事業、そして子会社のメルペイ(東京・港)が主導する金融事業の3本柱に注力してきた。2021年6月期通期の業績が上場以来の最終黒字を記録。米国事業は21年4~6月期の四半期で初の営業黒字を記録し、メルペイも単月黒字を達成した。

 「コロナ禍のさなかで始まった期であり、セーフモードで進めてきた結果論にすぎない」とメルカリ代表取締役CEO(最高経営責任者)の山田進太郎氏は意に介さない。だが、ここのところ3本柱以外の新たな収益源を模索する動きを活発化させている。

 21年4月に暗号資産やブロックチェーンを活用したサービス提供を目的とした子会社、メルコインを設立。21年9月からは子会社のソウゾウ(東京・港)を通じて個人事業主や中小企業を対象としたEC支援サービス「メルカリShops(ショップス)」を本格開始する。一方、フリマアプリ事業は米国以外への進出の検討を始めたことも明らかにしている。

 「ふと周りを見渡してみると機会が広がっていた。再度エクスパンション(拡大)するタイミングかなと思っている」と語る山田氏の真意を聞く。

メルカリ代表取締役CEO(最高経営責任者)の山田進太郎氏(写真:的野弘路)
メルカリ代表取締役CEO(最高経営責任者)の山田進太郎氏(写真:的野弘路)

2021年6月期通期業績が上場以来の初の黒字となった。

山田進太郎メルカリ代表取締役CEO(以下、山田氏):昨年、コロナ禍のさなかで新しい期が始まり、セーフモードで経営を進めてきた。あの時期、世の中がどうなるのか本当に先を見通せなかった。そのため、採用やマーケティング活動も抑えていた。メルペイも収益化に向けて早めにかじを切っていたので、結果的に単月黒字となった。

もちろん、上場から3年強で結果が出てきたという側面はある。だが、新しい事業にもっと早く取り組みたかったというのが本音だ。様々なことが重なってしまい、展開が遅れてしまった。今回の業績は一言で言えば、結果論にすぎない。

今年に入り新会社メルコインの設立、メルカリShopsの開始など、新たな手を打ち始めた。2年前、エンジニアのマネジメントやシステム開発体制に焦りを感じていたが、この改善が進んだということか。(参照記事:2年半ぶりの社長復帰、メルカリ山田進太郎氏の焦燥

山田氏:あの時期は割と苦労していた。AI(人工知能)活用を進めようとすると、データがきれいな形で保管されていなければならない。だが、当時はデータがバラバラに蓄積されており、今後の成長を妨げるボトルネックになる可能性が十二分にあった。一度きれいにしなければと対策を進めてきた。

 完璧とは言えないが、当時と比べたらエンジニアリングはかなり進化した。開発しやすい環境が整い、メルカリらしい開発スタイルの方向性が見えてきたと思う。

 我々が掲げているD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)も進んだ。現在はエンジニアの外国籍社員比率が半分になっている。社内ドキュメントの英語化が進み、ローコンテキスト化も進んだ。

 今後、米国以外へも事業を広げていきたい。グローバルで開発できる体制をつくっていければ。

これまで個人間(CtoC)でのEC(電子商取引)を展開してきたメルカリにとって、「メルカリShops」は初めての企業・個人間(BtoC)となる。

山田氏:メルカリShops事業を始めるきっかけとなったのはメルペイだ。決済サービスを手がけているため、比較的小さな規模の加盟店との付き合いが広がっていた。だが、こうした加盟店の多くがコロナ禍のダメージを被っていた。こうした事業者が個人と同様、メルカリで手軽に販売できるようにしたいというところから始まった。

 こうした小規模の事業者がECを始めようとするとき、当然、楽天グループやBASEといった選択肢がある。だが、リテラシーがある程度求められるのも実情だ。感覚的にはまだまだハードルが高いのだろう。

 メルカリでは個人が写真を撮ってアップして出品している。同じような感覚で個人商店などの人たちが出品できるようにしたい。我々の強みはテクノロジーを使って容易に出品できるUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)だからだ。

 また、実際にECを始めたとしても、結局のところ、どのように顧客に知ってもらうかというマーケティングの問題が出てくる。メルカリには既に数多くの顧客がいて、こうした顧客と高い精度でマッチングできるという強みがある。

 そもそも、日本のEC化率は1割未満と低いままだ。既存の事業者と競合するという段階にもない。ハードルの高さからECを敬遠してきた個人商店の方々に使ってもらえれば。メルカリShopsでまずはECを手軽に体験してもらい、本格的に取り組もうとなったときには卒業していただいて構わない。

 先日、ネットショップ開設支援「STORES」を手がけるhey(ヘイ、東京・渋谷)社長の佐藤裕介氏と会うことになった。相手方の戦略もあるだろうが、オープンな姿勢で一緒に市場を盛り上げていければと考えている。

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