大学系VCを設立する動きが広がっている。バッティングする可能性は。

鮫島氏:大学系VCは国のお金でやっている以上、なかなか失敗が許されない組織だ。20社投資して18社が倒産されたら困る。だが、逆に我々は1~2社のホームランを打てればいい。つまり、失敗できない領域についてまず我々が先陣を切り、その後、ある程度確度が高まったと判断したら大学系VCが出資するという流れが生まれればいいと考えている。実際、我々が量子コンピューターのベンチャーの立ち上げを促して最初に投資をした後、大学系VCから次々と声をかけられた。つまり、大学系VCとは十分に共存できると考えている。

誰かが全力で振り続ければ何かが変わっていく

実現までに時間を要する技術に投資すれば、その過程で新たな技術が生まれて代替される可能性もある。

鮫島氏:遠い未来を予測するとき、様々な方法がある。何もせずに何が勝つかを予測するのは批評家の仕事だ。今の段階で勝てると断言はできなくても起こりうる未来があり、10倍の資金、10倍の人材を投入してその未来が近づくのであれば投資をするのが投資家だ。

 環境領域を見てもどの技術が未来で花開くかは分からない。核融合はやはりダメで太陽光でいけるかもしれないし、洋上風力が主役に躍り出るかもしれない。すべての可能性を洗い出してベットしていく。100発100中である必要はそもそもない。

 今回のファンドは、ゴルフで例えるなら「マン振り(フルスイング)」だ。ファンドの規模としては小さいが、我々がマン振りをしていれば、ほかのVCや事業会社が少しずつ変わっていくかもしれない。量子コンピューターに投資を始めた2017年、周囲は冷ややかな反応だった。それでも時間とともに量子領域の研究者が増え、ベンチャーも増えた。無理だと思われている領域でも、誰かが全力で振り続ければ何かが変わっていくと信じている。

 周囲に冷ややかに見られるくらいが気持ちがいい。でなければ皆が勝ち馬に乗っていくゲームになってしまう。不確実性を楽しむという価値観を大事にしている。

ファンドとしてどのようなLP(リミテッド・パートナー)に参加してもらいたいか。

鮫島氏:今回のファンドには事業会社に広く参画していただければと思っている。我々はシードのタイミングから投資をしていく。可能性を秘めた技術でも、社会実装を進める上で様々な検証が必要になっていく。エネルギー、素材、建設など様々な領域でこの産業をゼロからつくっていこうという思いを持った企業と一緒にやっていければと考えている。

 日本の大企業は米国のユニコーンになるようなところにこぞって投資をしている。「日本に投資する会社がない」というのも海外に目を向けてしまう理由の一つかもしれない。だが、本気で日本の将来を考えるのであれば、日本で生まれた技術、日本で生まれた企業を支援してほしい。日本の未来を自分たちでつくっていく気概を我々も大切にしたいし、その思いを共有できればと考えている。

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