新型コロナウイルスの脅威が顕在化してから2年がたつ。最近では新たな変異型「オミクロン型」が猛威を振るい、経済活動にまた制限がかかり始めた。
コロナ禍によって人々の行動は大きく変容した。名刺管理サービスを手がけるSansanにとって、この2年は極めてかじ取りが難しかったに違いない。対面での接触が大幅に減少し、名刺交換というビジネス慣習に急ブレーキがかかった。
だが、逆風下でSansanは攻めに転じた。コミュニケーションの場がオンラインに移行していくと見れば素早く新機能を追加し、Sansanがこれまで培ってきたアセット(資産)をフルに使って名刺以外の新規事業への投資も加速させた。
コロナ禍の経営について、Sansanの寺田親弘代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に話を聞いた。(構成:梶塚美帆=ミアキス)

2020年初頭から新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した。あれから2年がたつが、名刺を軸にサービスを展開してきたSansanにとってどのような影響をもたらしたか。
Sansan代表取締役社長CEOの寺田親弘氏(以下、寺田氏):新型コロナはSansanにとって向かい風だった。人と人が出会わなくなっているので、おのずと名刺交換の機会も減る。新規顧客獲得ペースは減速したが、解約率が高まることはなかった。
何においてもそうだが、こうした状況を機会に変えなければならない。そういう意味では、Sansanの進化に挑み続けた2年間だったと言える。オンラインで名刺交換できる機能を追加したり、やり取りしている相手のメールの署名や差出人情報をSansanに取り込む「スマート署名取り込み」などの機能を追加したりして対応した。これらは本来であれば5年後に想定していた機能だ。一気に前倒しした。
一方、マルチプロダクト戦略も一気に進めた。請求書のオンライン受領と一元管理を可能にするサービス「Bill One(ビルワン)」や契約業務を一元管理するクラウドサービス「Contract One(コントラクトワン)」など、Sansan以外の事業の柱をつくった。特にビルワンは開始から2年弱がたつが、MRR(Monthly Recurring Revenue:月次経常収益)は2021年11月時点で6000万円を超えた。22年5月末までにARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)10億円を目指す。
変革を進めてきたつもりだが、個人的に全然満足していない。Sansanの進化はまだ完了していない。新規顧客獲得ペースがもう一度上がっていくところまでいかないとコロナ禍を抜けきれて良かったとはならない。今年が勝負。新規顧客と既存顧客の両方でやり切れれば、危機をチャンスに変えられたと言えるだろう。
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