愛知県が“水循環”をキーワードに、再生可能エネルギーなどの導入による国土強靱化などのプロジェクトに取り組む矢作川(写真:アフロ)
愛知県が“水循環”をキーワードに、再生可能エネルギーなどの導入による国土強靱化などのプロジェクトに取り組む矢作川(写真:アフロ)

 2021年9月1日、愛知県の大村秀章知事が「矢作川カーボンニュートラル(CN)プロジェクト」に着手すると発表しました。県内を流れる矢作川流域で“水循環”をキーワードに、再生可能エネルギーの導入による国土強靱化や森林保全、治水、エネルギー利活用を官民連携で総合的にマネジメントするという日本初のプロジェクトです。

 矢作川CNプロジェクトの肝は「治水」「水道事業」「エネルギー」の3分野を流域マネジメントとして、ひとつの施策に統合することです。実現には行政が抱える課題があります。日本の河川は国土交通省や都道府県など行政が管理しています。一方、生活や農林業、産業に必要な水は用途に応じて複数の省庁が管轄。農業用水は農林水産省、上水道は厚生労働省、工業用水は経済産業省、水源林は林野庁となっており、縦割りでそれぞれの分野を見ています。

 昨今は激甚化する豪雨災害に対応するためにも、治水と利水の両面から横断的に流域を管理する新たな仕組みが不可欠です。そのためには流域を一体として、水に関わるあらゆる分野の連携を図る、スケール感のある仕組みを構築しなければなりません。矢作川CNプロジェクトは、水資源のより効率的な活用を実現するために始まりました。これは日本初の流域マネジメントのモデルケースとなるでしょう。

 今回のプロジェクトで、私がとりわけ重要だと考えるのは、「環境・エネルギー分野」の取り組みです。二酸化炭素(CO2)を大幅に削減するという観点でこの官民連携プロジェクトを見れば、河川流域のトータルマネジメントには大きな可能性が秘められているのです。

利権調整が流域エネルギー化のカギに

 例えば、水源林を整備するためには、上流部分における林業を再興させる必要があります。定期的に森を管理することができれば、CO2の排出削減に資するだけでなく、端材などを使った木質バイオマス(木材に由来する再生可能な資源)による地域の電力自給も可能になります。

 また、治水と利水をうまくコントロールすれば、農業用水や工業用水の用水路の流れをエネルギーとして活用し、水車を回すことで発電する「小水力発電」も新たな電力供給源として誕生します。高性能な蓄電池と組み合わせれば、地域における効率的なエネルギーマネジメントが実現できるでしょう。

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