- (1)評価軸の再設計
- (2)オンボーディング
- (3)研修
- (4)目標・評価の運用
- (5)キャリアパス
- (6)アルムナイ
- (7)ダイバーシティー
- (8)ハイブリッドワーク
- (9)人事組織の強化
(1)評価軸の再設計では、「個人としてどれだけ能力を発揮してきたか」を重視してきた評価軸に、「チームをいかにエンパワーできたか」「チームビルディングに貢献したか」という構成要素を追加しました。同時に、これまで部分的に採用されていた360度フィードバックを全社導入し、能力開発・組織貢献など「チームとしての能力発揮」を重視して評価軸を再設計しています。
(2)オンボーディングは、リモート環境で十分なサポートができなかったという前述の課題を改める必要がありました。また新メンバーに丁寧に説明する人、いきなり業務に就かせる人など、担当するマネジャーによって対応にかなり差があることも分かりました。こうした属人性をなくし、「どんな人がいつ入社しても円滑に会社やチームに溶け込める」ことを目指して、独自のオンボードプログラムを用意しました。
このプログラムでは入社前までにやること、入社初日・1週間・2週間・1カ月・2カ月・3カ月と時系列に沿ってTo Doリストを用意し、チェックボックスを付けています。このリストは業務内容はもちろん、会社のルールやコンプライアンス、人事制度等も網羅しており、全てクリアすれば業務と会社に対する理解も深めてもらえるよう設計しました。また一人ひとりにメンターをつけて、その成長を責任を持ってサポートするとともに、早期定着・早期活躍を促進します。
(4)目標設定の運用については、どの会社でも1年や半期の目標設定を行っていると思います。もちろんラクスルでも実施していましたが、マネジャーによって目標設定の水準や精度が異なるというブレが発生していました。社員のグレードによって適切な目標設定が行われなければ、そこに対する評価もフェアに行われません。ここでは全ての社員が役割に応じたミッションを背負い、成果を出したら公正に評価することで個人の能力を開発できるよう運用のあり方を見直しました。同時にマネジャーには研修を行って目標設定に対するキャリブレーション(調整)の統一化を図ります。
いくつか取り上げて紹介しましたが、これらの全テーマに大きく関わる取り組みの1つが「ジョブディスクリプション(職務定義書)」の導入です。これは業務の担当領域や責任の範囲、パフォーマンスの水準値までを明確に文書化したもので、海外では当たり前に運用されています。例えばラクスルでは社員の職種やグレードごとに「どんな仕事をどんな水準のパフォーマンスで遂行するのか」を事細かに規定しているので、これによってミッションや目標設定が明確化されるのです。またジョブディスクリプションの水準に対して、それぞれの目標設定が妥当かどうか会議体を通じてクロスチェックをかけるので、評価の公平性・透明性が担保されます。
もう1つ大きな取り組みが、「ローコンテクスト文化」への移行です。もともとラクスルではハイコンテクスト、つまり暗黙の了解、長く在籍している人だけが理解できるようなやりとりが多く行われていました。「あれをやっといてください」「分からないことがあれば聞いてください」などはハイコンテクストな指示の典型例で、これらは新しく入った人を拒絶しがちです。
一方、ローコンテクストとは、前提となる文化を共有していない新しい社員が、他に解釈する余地のないよう明確に言語化することです。その方が誰でも理解できるので新しく入ってくる人に対してフレンドリーですし、組織の拡張もしやすくなります。
入社したばかりの人にも通じるような言語化は手間もかかりましたが、ダイバーシティーのある組織をマネジメントしていくためには不可欠な取り組みでした。
実はこれらの取り組みは、ラクスルがインドに開発拠点を設けたことと深く関係しています。インドのカントリーマネジャーが考案した、非常に明確かつダイバーシティーに対応した人事制度とはいかなるものだったのか。次回詳しくご説明しましょう。
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