肥大化するコーポレートITの管理業務

 企業がSaaSを導入した場合、コーポレートITは利用する社員一人ひとりにアカウントを作成してIDとパスワードを設定し、それらを管理しなければなりません。利用するSaaSが増えればそのリストはどんどん膨大なものになっていきます。

 新たに社員が入ればそれぞれのSaaSアカウントを発行する必要がありますし、異動で部署が変わったらひもづく情報も修正する必要があります。もちろん社員が退職するときは、利用していたSaaSアカウントは削除しなければなりません。利用するSaaSが増えれば増えるほど、コーポレートITの管理業務はどんどん肥大化していくのです。

 さらに、コロナ禍の現在、コーポレートIT業務を圧迫しているのがハードウエアの管理です。PCやタブレットなどのITデバイスはリモートワークに不可欠ですが、コーポレートITはすべての端末を管理するだけでなく、期末の棚卸しで資産状況を報告しなければなりません。

 ところが、リモート環境では利用状況の実態を把握するのが困難になるだけでなく、紛失・破損のリスクも高まっているのです。ラクスルでは2021年7月に様々な企業で働く約600人のコーポレートIT部門担当者に対し、これらの管理体制に関してアンケートを行いました。その結果、SaaSなどソフトウエア資産、そしてITデバイスなどハードウエア資産、どちらの管理も約50%の企業がExcelやスプレッドシートで管理しているか、そもそも管理できていないということが分かりました。

 これは中小企業に限る話ではありません。なかには社員数が1000人や1万人という規模の会社もありました。このようにコーポレートITでは非常に生産性が低く、アナログな管理業務をいまだ余儀なくされているのです。

 また社員からの「ソフトウエアの使い方が分からない」といった問い合わせへの対応、社員に支給するITデバイスの調達・キッティング(必要なソフトウエアのインストールや設定を行い、業務ですぐに使えるようにすること)業務なども、コーポレートITが担っています。企業のDXを縁の下で支える存在でありながら、多くのアナログ業務を抱え、最も疲弊しているのがコーポレートITの実態と言えるのではないでしょうか。

 そんな環境が影響しているのか、Dell EMCが2019年2月に発表した 「IT投資動向調査」によると、コーポレートITの離職率は21%と非常に高く、退職に伴って発生する引き継ぎのためのコストやストレスが与える影響は小さくありません。また、IT業界全体が人材不足ですから、後任の採用や人員補強も困難です。しかたなく少人数で大量のアナログ業務を回すなかで、いつの間にか業務はブラックボックス化、属人化していきます。中小企業の約3分の1で、たった1人の担当者がコーポレートIT業務を担う(もしくは総務と兼任している)「ひとり情シス」が常態化しているといわれています。

 そのため、コーポレートITは外注への依存度が高い。これは、ラクスルも例外ではありませんでした。社員数はこの4年間で約3倍に増えましたが、それをフォローするためのヘルプデスクを外注するコストも約2.5倍となり、年間5000万円近くまで膨らんでいたのです。

 生産性は高くないけれど、重要性とコストは高いコーポレートIT。ここで抱える悩ましい課題に、ラクスルはどのように取り組んできたのか。次回はその詳細についてご紹介します。

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12/15ウェビナー開催、「外食を救うのは誰か」第1回――すかいらーく創業者の横川氏が登壇

 新型コロナウイルスの感染拡大から3年目となり、外食店に客足が戻りつつあります。一方、大手チェーンが相次ぎ店舗閉鎖を決定するなど、外食産業の苦境に終わりは見えません。どうすれば活気を取り戻せるのか、幅広い取材を通じて課題を解剖したのが、書籍『外食を救うのは誰か』です。
 日経ビジネスLIVEでは書籍発行に連動したウェビナーシリーズを開催します。第1回目は12月15日(木)19:00~20:00、「『安売りが外食苦境の根源だ』ファミレスをつくった男が激白」がテーマです。講師として登壇するのは1970年にファミリーレストラン「すかいらーく」1号店を開業した横川竟氏と、外食経営雑誌『フードビズ』の神山泉主幹です。書籍を執筆した記者の鷲尾龍一がモデレーターとなり、視聴者の皆様からの質問もお受けします。ぜひ、議論にご参加ください。

■日程:12月15日(木)19:00~20:00(予定)
■テーマ:「安売りが外食苦境の根源だ」ファミレスをつくった男が激白
■講師:横川竟氏(すかいらーく創業者、高倉町珈琲会長)、神山泉氏(外食経営雑誌『フードビズ』主幹)
■モデレーター:鷲尾龍一(日経ビジネス記者)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
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