
2022年は、ラクスルグループにとってたくさんの変化があった1年でした。その最たるものが、6月に発表したセイノーホールディングス(HD)との提携でハコベル事業をJV(ジョイントベンチャー)化したことです。この発表は非常に大きな反響をいただき、たくさんのメディアで紹介していただいたので、ご存じの方も多いかもしれません。今回はそんなハコベルJV化に至った背景について、当時の事情も踏まえながらお話ししようと思います。
「どうすればハコベル事業をもっと成長させることができるのだろうか?」
そう考え始めたのは、21年も後半に差しかかったころでした。売り上げは少しずつ伸びているものの、企業価値の源泉となる売上総利益を伸ばしきれず、セグメント利益は右肩下がりになりつつありました。ハコベル事業を再成長させるために、経営者としてどんな手を打つべきか考え始めたのです。
一方、テレビCM事業のノバセルは非常に順調で強い伸びを見せており、主軸の印刷事業であるラクスルも着実に成長していました。これらの成長領域をしっかり支えるためには、さらなる投資が不可欠です。そこに加えてハコベルのテコ入れも行うとなると、投資額が全方位に分散してしまって十分な投資を行うことができません。
また私たちは21年から「ROE(自己資本利益率)10%以上」、つまり資本金に対して10%以上の利益を出すことを目標に掲げています。高い利益を出しながら、成長領域のノバセル・ラクスルに投資し、なおかつハコベルを見直す、という経営者として複雑な方程式を解く必要に迫られたのです。そのカギを握っているのが、ハコベルの成長でした。
それでは、なぜ当時のハコベルは伸び悩んでいたのでしょうか?
私たちが物流事業を5~6年手がけてきた中で、感じていた要因は2つありました。1つは当社はテクノロジー企業であるため、当事者である物流企業に大切な基幹システムを任せていただくのはなかなか難しかったのです。もう1つは、自分たちがどんなに素晴らしいテクノロジーでシステムをつくったとしても、実際は現場のオペレーションにたけた会社が強い、という業界における認知です。さまざまな産業の中でも、ひときわ保守的でクローズドな物流業界において、当社はオペレーション実績や信頼感が決定的に欠けていました。
ハコベルは日本の物流インフラのプラットフォームになりうる高いポテンシャルを持った事業だという自負はありました。しかしこのまま自分たちのやり方を続けていくのは、普及に時間がかかりすぎるのではないか。ラクスルグループの成長事業にしっかり投資しつつハコベルを再成長させるためには、業界内でパートナーを見つけたほうがいいのではないか。そんな議論を22年の第1四半期ごろからスタートしたのです。
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