もちろん、組織マネジメントや採用の進め方など、経営の観点で横展開できる要素は多分にあります。しかし、事業としての価値のつくり方、システムのつくり方、そして売り方は業界ごとに異なっていて、それらを「自分たちが分かっていると過信すべきではない」という認識に至りました。

 これは後に続く「ノバセル(運用型テレビCM)」や「ジョーシス(情報システム担当者支援サービス)」といった新規事業の立ち上げにおいても、課題の解像度を高める上で大切な気づきになったと思います。

 もう1つ、複数事業を展開する上で大切なのは、事業の成長をどこまで待てるかということ。例えば、ネットサービスなどは、手応えがなければ1年を待たずして撤退してしまうケースもよくあります。

 以前、ラクスルの採用活動についてお話ししましたが、社員には長期間の雇用を前提としてもらっています。ラクスルは産業の仕組みを変える会社であり、伝統的な業界構造にDXをもたらすにはそれなりの時間がかかるからです。

 経営者としては我慢が必要とされることもありますが、たった1~2年で事業から撤退してしまうと、業界にニーズがなかったのか、それともやり方が悪かったのかが分からないままです。

 これまで自社や他社の様々な事業を見てきましたが、多くの場合はやり方が悪かったというケースが多く、それは改善を続けることで少しずつ解消できるはずです。

 皆さんは、会社設立からIPO(新規株式公開)までの平均的な期間をご存じでしょうか?

 最近は短縮傾向にあると言われていますが、2020年時点で約17年という調査結果が出ています。ラクスルもIPOまでに9年を要しました。やはり1つの事業が市場にフィットするまでには、それなりの時間が必要だというのが私の持論です。

 ハコベルは事業開始から5年にして、ようやく産業のインフラとして認知され、ユーザーから多くのご支持をいただけるようになりました。うまく事業が成長できたときの企業収益やインパクトを考えると、5年や7年という長期的な視点でチャレンジするほうが結果的にうまくいくのではないでしょうか。

 そして業界内でデジタル化の先鞭(せんべん)をつけ、20年後、30年後にはマーケットをリードしている。それがラクスルの産業DXビジネスで目指していることなのです。

この記事はシリーズ「松本恭攝の「産業DXの要諦」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

ウェビナー開催 西口一希氏とミスミに学ぶ 会社を成長させる「顧客理解」

 これまで約40社の経営を支援してきたStrategy Partners代表の西口一希氏。「成長の壁」に悩む多くの経営者に対して「企業の成長に伴い、顧客よりも財務の数字や組織運営に関心を向けてしまう問題」の大きさを指摘してきました。
 日経ビジネスLIVEでは、成長の壁に悩む経営者や事業責任者、さらに現場で取り組む層に向け、西口氏が『顧客起点の経営』について語るウェビナーを2週連続で開催します。ぜひご参加ください。


■第1回:2022年7月5日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:なぜ企業の成長は止まるのか? すべてのカギを握る顧客理解
■講師:『顧客起点の経営』著者・Strategy Partners代表 西口一希氏

■第2回:2022年7月12日(火)19:00~20:00(予定)
■テーマ:顧客を分析、ニーズに対応して急成長 ミスミ「meviy(メビ―)」事業に学ぶ
■講師:西口一希氏、ミスミグループ本社 常務執行役員meviy事業担当・ID企業体社長 吉田光伸氏

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員のみ無料(事前登録制、先着順)。

>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。