実はお客様と運送会社をつなげる手前の領域で、運送会社は非常に多くの業務課題を抱えていました。その大半がExcelで管理された顧客や運送会社のリスト、電話・FAX・メールによる連絡、紙ベースの配送指示書や請求書のやり取りなど、アナログな業務形態に起因していました。

 配車と呼ばれるマッチング業務は、これらの非効率でアナログな業務のために担当者の“経験値”や“勘”に依拠した、属人的な業務となっていたのです。

 ハコベルコネクトは、これらの業務をすべてデジタル化することで効率化を図るだけでなく、迅速な配車と物流データの可視化を可能にしました。様々な情報が一元化されることで「どの荷物がいつ出荷され、どの運送会社がいまどこに向かって運んでいるか」という配送ステータスをシステム上ですぐに把握可能にしたのです。

 アナログな業務形態では、荷物の状況を知るだけでも、複数の運送会社間で連絡を取り合ってやっと情報がつかめるというものでした。それほど運送業界のシステム化は遅れていたといえます。

 おかげさまでハコベルコネクトは年々利用者数を伸ばしており、現在はNTTロジスコ(東京・大田)やネスレ日本(神戸市)といった大企業の物流部門の基幹システムとしてご利用いただいています。

 これら大手企業の物流は非常に複雑性が高かったこともDXが進まなかった要因だと思います。もちろん自社開発でシステム化する手段もあったはずですが、大手システムベンダーに発注すると数億円から数十億円はかかります。そのため、後回しにされてきたのかもしれません。そのためか、ハコベルコネクトは比較的規模の大きな企業からの多くの引き合いがあります。

 また、多くのお客様にこのサービスをご利用いただけることで、私たちの元にはお客様の運送管理データが蓄積されていきます。現在、ハコベルではこれらのデータを解析し、独自のアルゴリズムで「どう配送すると効率的に届けられるか」という最適な配送ルートの作成・提供というサービスにつなげています。このアルゴリズムの開発は海外開発拠点のインドチームが担当していますが、ハコベル事業において非常に大きな価値を生みつつあるのです。

自分たちが分かっていると過信しない

 さて、ここまでハコベル事業の歩みをご紹介してきましたが、異なる領域での新規事業展開のあり方で気づいた点についても触れておきたいと思います。

 冒頭で述べたように、ハコベルの成長はラクスルの成長とは全く異なる軌跡を描いてきました。ラクスルでのノウハウを活用できると考えていましたが、業界が違うと取り巻く事情もバラバラで、フォーマットとしての「事業のつくり方」というものはないことを痛感しました。