外部企業とよいパートナーシップを組んだり、社員のモチベーションが上がる雇用設計をしたりと、髙橋さんのそういうスタンスはどこで身に付いたのでしょうか。

 やはり、自分自身がそうやって育ててもらった経験が大きいと思います。僕はもともと、京セラという会社に入り、創業者の稲盛和夫さんに「通信」という新しい事業をやりなさいと言われて、ボーンと放り出されているわけです。

 そして、出向から数年がたった1990年代後半の「iモード」が出てすぐの頃、「携帯電話にインターネットが入るの?」って言っていた時期に新しい組織をつくられて「やって」と行かされました。そうすると、やっぱり自分の力だけではできないので、パートナーシップを組みながら広げていくビジネスモデルの大事さに気づかされるわけです。

 「なるほど。企業はこうやって新しい領域をつくっていくんだ」と、稲盛さんのリーダーシップを実感しているんですよね。そういう土壌があったので、自分もそうしなきゃいけないと感じているのだと思います。

 今、社内では、「両利きの経営」を一生懸命やっているところです。「両利きの経営」では、右サイドの人だけに「イノベーションを起こせ」と言っても、左サイドの現業の人たちが冷めてしまうという話があるんですが、あれはまさにその通りだと思っています。だから、左側の現業の成長がなければ、右側のイノベーションを起こせないということは、社内でも徹底的に言っています。

 今年の4月に、右側のイノベーションを起こすために、事業創造本部をつくりました。そこでも「いかに左側の事業アセットを活用しながら新しいものをつくっていくかのベクトルを明確にしたい」と伝えました。経営者として、こうしたメッセージを常に発し続けることが、大事だと思っています。その意義をはっきりさせた上で、新しいフィールドに人を送り込んでいく。僕自身がやってもらってきたことだけれど、そうやって新しい領域をつくっていこうと考えています。

先ほどのジョブディスクリプションの明確化が進み、新領域に携わるとがった人が増えると、人材の流出も気になるところだと思うのですが。

 とがった人材が育つことは大変ありがたいことだと思います。でも、とがった人材ほど、視座を上げていかないといけない。だから、ユニークなものの見方をしている社員には「君の事業は面白いし、外の人ともよく話をしているだろうから、普通は知らないことも知っている。でも、それをもう一段階上げるために、うちのリソースをどう使えばいい?」と問い続けています。

 ジョブディスクリプションにより社員が高度に専門化するようになったら、当然「外のほうが面白いんじゃないか」と考える人材が増えてくるはずです。だから、「うちの会社のアセットを使ったら、もっと面白いことができる」という発想を持てる視座の高い人材を育てていかないと、どんどん人が出て行ってしまいます。

「今の会社を辞めてスタートアップをつくりたい」といった相談をよく受けますが、こうした人たちには最初に「今の会社の中でできないの?」と質問します。灯台下暗しではないですが、エッジが立っている人の中には、自身の会社を過小評価している人が多いと感じています。

 大企業には、もっとできることがあるはずなんです。最近、経団連のスタートアップ委員会に南場さん(ディー・エヌ・エー創業者の南場智子氏)が入り、よく話題に上げられていますが、0→1のところから、10→100のところに投資することを考えていかなきゃいけない時期を迎えているんだと思います。

 つまり、スケールアップしたいスタートアップやベンチャーにフォーカスして、我々大企業が投資したり支援したりしなくてはならないフェーズに入ってきていると思います。もっと日本から、スタートアップをユニコーンに成長させる「インパクトグロース」をつくっていかなきゃね。

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