「持続的な事業」をつくるために、KDDIのアセット(資産) が活用できるということでしょうか?

 お客さまとつながり続けるためには、「通信」が必要ですよね。そして、そこに付加価値を生むのがDXです。持続的成長企業を目指すのであれば、単に月額料金をもらう「サブスクリプション」ではなく、お客さまに継続的にアプローチして価値が積み重なっていく「リカーリング(継続的に収益を得られるビジネスモデル)」であるべきです。リカーリングを進めるには、ビッグデータが必要になります。

 そもそも我々の会社も、これまでは「販売して終わり」という仕事をしてきたんです。携帯電話は一度販売すればしばらく使っていただけるので、2年くらいは連絡を控えて静かにしているモデル。その間、ほとんどお客さまにアプローチできていなかった。

 でも、実はDXで一番大事なのはお客さまに商品を届けてからですよね。お付き合いが始まって、関係を深めていくためにビッグデータが必要になるわけで。今になってやっと、もっとお客さまを知ることが大事なんだと原点に立ち返った感じです。これを本当にうちの会社でできるようになったら、強くなると思う。

これは通信会社に限らず、全ての会社の共通の悩みだと思いますが、DXを進めるにあたっては自社のアセットだけでは実現できないこともありますよね。KDDIは、スタートアップにも積極的に出資されていますが、パートナー選びの基準は?

 社員にはいつも「うちのアセットを最大限生かして、大きくなれる会社を選んでおいでよ」と伝えています。

 その企業が持つテクノロジーがKDDIに対してシナジーを起こす場合もあるかもしれないけれど、やっぱり会社の規模は我々のほうが大きいから、なかなかそうはならないですよね。それよりは、我々がパートナーの役に立つというベクトルで考えるようにという話をよくします。

 というのも、最近大企業の社長と話をしていて気づいたことなんだけれど、みんなスタートアップの人たちとよく会っていると言うんです。「会ってどんな話をしているんですか?」と聞くと「我々の企業はどう変わるべきか?」を聞いているという。

 スタートアップにそういう質問をしている人は、うちの会社にも多いと思う。でも、本当にアントレプレナーを育てようと思ったら、自社のアセットを使って、そのパートナーの人たちにどう成長してもらうかを考えるところまで行き着かないといけない。その発想の転換は重要なポイントなので、しつこく言っていかなくてはならないと感じます。

<span class="fontBold">伊佐山 元(いさやま・げん)</span><br />WiL代表。パートナー企業(出資企業)に眠る社内IP(知的財産)を活用した新規事業創出や企業内起業家の育成にも力を入れている
伊佐山 元(いさやま・げん)
WiL代表。パートナー企業(出資企業)に眠る社内IP(知的財産)を活用した新規事業創出や企業内起業家の育成にも力を入れている

確かに、大企業とスタートアップがお見合いすると、「我が社にとって、その技術がどう役に立つの?」という大企業側の目線で話が進むことが圧倒的に多いように感じます。

 2000年以前に日本人がシリコンバレーに一斉投資したときの失敗談と同じです。シナジーのベクトルを自分に向けると、結局失敗してしまうという。