社会貢献意識が高いZ世代へ伝えるべきこと

シリコンバレーでは、ミレニアル世代やZ世代を中心に、自分の興味や情熱を発信してビジネスにつなげる「パッションエコノミー」が注目を集めています。自分が好きなもの、夢中になっているものを、ANAグループのリソースを使ってどんどんトライできる環境を整えれば、若い人材を引きつけられるのではないでしょうか。

 1年半くらい前に社内のZ世代と役員層でミーティングをしたのですが、そこで分かったのは、この世代は自己実現に興味があるということ。また、社会に貢献したいという意識がすごく強いという点です。そういった環境を用意できているかと言われればまだまだですが、こうした新しい世代とのコミュニケーションを絶えず取っていかなければと感じています。

 一方で、我々の世代が伝えていかなければならないこともあります。若い世代に対して、ただ礼賛するだけでもダメだし、警戒するだけでもダメです。彼ら彼女らの感度の高さを生かしつつ、これからの時代を担う上で必要となる過去の知識や判断力について、我々が補える部分はしっかりと補っていく。これが責務なのでしょうね。

今後の話を聞かせてください。米国ではワクチン接種が進んだことで、人の移動が爆発的に増えています。日本の航空業界も、いずれ持ち直すとお考えですか?

 確かに、日本でもある程度ワクチン接種が進めば、米国同様、航空需要が戻ってくると思います。ただ、どれだけワクチン接種が広がろうとも、変異ウイルスは次々と増えていますし、コロナに限らずパンデミックは今後何度も起こり得るという前提でビジネスを再構築しなくてはならないと考えています。私は「航空一本足打法ではダメだ。ビジネスモデルを変えよう」と社員に伝えています。

 また、社員を多く抱えるビジネスはこうした突発的に訪れる状況への対応が弱い。空港の免税品店もしかり、パンデミックが起こると一網打尽でダメージを被ったわけです。「いったん小さな会社になって、コロナのトンネルを抜けよう」とも伝えています。

 平凡な言葉かもしれません。しかし、自分で頭を絞り出して考える言葉というのは、やはり伝わるんですよね。小さな会社になるというのは、具体的には社員を増やさない、機材を売却するということ。厳しさを伴うため、全社員の協力がないと実現できません。

内部を固める一方で、ANAグループとして、金融やプラットフォーム事業など、非航空事業で数千億円稼げる事業をつくりたいといったコメントも出されています。中には「別の業種でそう簡単に稼げるわけないだろう」などという人もいると思いますが。

 ANAグループでは過去、「トリプルセブン」という目標を掲げた経営者がいました。「国内線の売り上げが7000億円、国際線の売り上げが7000億円、貨物が7000億円」です。国際線はともかく、貨物がそんなに稼げるようになるはずないだろうと誰もが思っていました。

 ところが、ここにきて貨物ががぜん元気なんですね。まだ7000億円に達しているわけではありませんが、勢いが増しています。つまり何を言いたいかというと、「やはり、将来は分からない」ということなんです。

 今後、個人のお客さまが最初にアクセスするのは、プラットフォームになっていくとみています。ANAのウェブサイトは、今、日本の中でもアクセス数が多いプラットフォーム的な拠点に育っていますが、だとするならばお客さまのニーズを満たす新しいドアになる可能性があると思っています。

その発想は米国のベンチャーがたどってきた歩みと同じです。米ウーバー・テクノロジーズがその典型ですが、日常生活の中で何かやりたいと思ったときに、すぐできる環境を用意する。こうしたプラットフォームをつくっていく上で、どのような視点が必要になるのでしょうか。

 重要なのは「マーケットイン」の発想です。

 2021年5月から利用していない駐機中の飛行機の機体を使って結婚式を挙げられる『THE WEDDING with ANA ~機内ウエディング~』を始めました。考えた社員に話を聞くと、「今、飛んでない飛行機を活用する」という発想よりも先に、「コロナで結婚式を挙げられなくて困っている人がいる」というニーズに気づいたと言うんです。ニーズがあるから飛行機を使う。このマーケットインの発想が大事です。

 我々のように飛行機を購入し、パイロットを育成するという「プロダクトアウト型」で育ってきた会社にとって、こういう発想ができる社員が育ってきたことは、非常に頼もしく思っています。

 こういった組織横断的プロジェクトでは、社員は組織を超えてプロジェクトを実現する必要がある。例えば飛行機をレストランとして活用するプロジェクトでは、保健所の規則でレストランとしての営業許可を取るために、急きょ整備部門を巻き込んで特別な設備を取り付けるなど、様々な調整を迅速に行ったんです。

 もし、この案件を役員会を通していたら、おそらく実現できなかっただろうと思います。このように、現場がクラブ活動のように協力し合って実現したところが、今回の事業の素晴らしいところだったと私は考えています。

 同じように、「修学旅行に行けない高校生が抱える悩み」に着目して実現したのが、バーチャルリアリティーの修学旅行です。こちらもやはり、マーケットインの発想からスタートしています。

 プラットフォーム事業というと、ものすごく大それたことのように思えるかもしれません。それこそGAFAといった圧倒的なプラットフォームを持っている企業もある。しかし、肝心なのは「既存事業のリモデル」、つまり、モデルを変えることだと思っているのです。そこでは、マーケットインの考え方や新しいアプローチを試みる社員がいることが重要になります。

 新規事業も既存事業のリモデルも、同じように重要だし、難しいものです。両輪で進めていく必要があるでしょう。

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10/19開催 星野リゾートが実践する、「Z世代」を顧客にする極意

 1990年代中盤から2010年頃に生まれた世代を指す「Z世代」。幼い頃からインターネットに触れ、スマートフォンなどにも慣れ親しんだ「デジタルネーティブ」世代ともいえます。最近まで、Z世代をはじめとした若者は“SNS映え”を重視するとみられてきました。しかし、企業が若者向けに仕込んだ“映え”は見透かされる時代に。上の世代のZ世代観は、現実とかい離しているケースも目立ちます。

 日経ビジネスLIVEは日経クロストレンドと共同で、10月19日(水)19:00~20:30に、「星野リゾートの実践から学ぶ、『Z世代』を顧客にする極意」と題して、ウェビナーをライブ配信する予定です。Z世代の意識や消費行動、さらにはZ世代に響く企画などについて、議論を交わします。視聴者の皆様からの質問もお受けします。ぜひご参加ください。

■開催日:2022年10月19日(水)19:00~20:30(予定)
■テーマ:星野リゾートの実践から学ぶ、「Z世代」を顧客にする極意
■講師:今瀧健登氏(僕と私とCEO、Z世代のヒットメーカー)
梅ケ谷夏歩氏(星野リゾート「界タビ20s」プロジェクト)

■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス、日経クロストレンド
■受講料:日経ビジネス電子版と日経クロストレンドの有料会員はいずれも無料で参加できます(事前登録制、先着順)。有料会員以外は3300円(税込み)となります。
>>詳細・申し込みはリンク先の記事をご覧ください。