中田社長といえば、女性活躍も含めて大胆な人事抜てきで知られています。そういった登用の際には、何を意識していらっしゃいますか。

 コロナになってからは制限もあるのだけれど、海外も含めてできるだけ直に社員に会うようにしています。それは、若い人も含めて。もちろん本当に人を判断するときは、一緒に仕事をして長時間共に過ごしたほうがいいですが、会って話すだけでも全然違うので。やはり、異質な人を抜てきするのは直属の上司には難しいですよね。リスクも考えるだろうし。本来、人事に社長が口出しすべきではないのかもしれません。ただ抜てき人事こそ、トップダウンでしかできないものだとも思います。

金融機関は、役員と一般社員の間に高い壁があることが多いのですが、大和の場合、中田さんと社員の距離がものすごく近いですよね。

 やはり、「現場に解あり」だと思っているからでしょうか。コロナの前には、しょっちゅう支店に行って若い社員も含めて懇親会をしていました。支店長や部長などはピリピリして寄ってこないのですが(笑)、1年目や2年目の社員は気軽に話しかけてくるのです。

 あるとき、懇親会の席で「社長、聞いてくださいよ。私、奨学金を返すのが大変なんです」と言われたことがあって。すると横にいたメンバーがみんな「私も」「俺も」と言い出したのです。そこで調べてみたら、日本では今、2人に1人が奨学金で大学に行っているといわれている。その返済が大変で社会問題になっていることにも、そのときに知りました。そこで、すぐに整備したのが奨学金の返済を会社が肩代わりする制度です。5年間は奨学金を全額肩代わりして、少し給料が上がって余裕が出てくる6年目から少しずつ元金だけ返す制度をつくったのです。そうしたら100人くらい応募してきましたね。それもやっぱり現場で若い人から話を聞いたから分かったことで。このことに限らず、現場と話すことは大事ですね。

それこそ、コンサルが書いたリポートだけ読んでも分からないところですよね。金融でもビットコインだ、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)だ、NFT(非代替性トークン)だというのも、それをトレードしている若者と交流しないと、なぜそれに熱狂しているのか分からないですから。

 以前、伊佐山さんにアテンドしてもらってシリコンバレーで取締役会を行ったこともありましたよね。滞在中に実際に自分たちでアプリをダウンロードして「ウーバー」を使ったり、米フェイスブック(現メタ)に会社訪問に行ったり。そういった、自分たちの目で一次情報に触れていくことは、本当に重要だと思っています。

そういうカルチャーの中では、タレント(才能)も育っていくと思うのですが、人材の流出に関してはどう考えていますか?

 これはもう、よいこととして捉えるしかないですね。もちろん本音ベースでは、大和証券グループ本社でもいろんなハイブリッドビジネスをやっているから、そちらで活躍してくれたらうれしいとは思います。そのタレントを生かしながら、仕事にモチベーションを持ってやり続けられる環境を作りたいと思います。

 一方で大和出身の人間がいろんなところで活躍してくれているのも、それはうれしい。活躍している人間の経歴を見たら大和証券入社とある。それって素晴らしいことじゃないですか。

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