それを有言実行できる会社は素晴らしいです。業界初のことに挑戦するとなると、取締役会などで反対意見は出ませんか?

 その点に関しては2つ、大和ならではの特徴があると考えています。まず1つ目。これは功罪両方ありますが、証券会社のビジネスは、個々の専門性が高いのです。グローバル・マーケッツもそうだし、M&A(合併・買収)ビジネスもそうだし。すると、それぞれの部門から上がってきた案件を、別部門の人間がおいそれとジャッジできるものではない。

 みんなで賛否を取れるような案件は、それほど多くない。だから暗黙知のやり方として、それぞれの部門から上がってきた案件に関しては、責任者を明確にしてコミットしてもらう。もちろん、ガバナンスとしてむちゃなリスクを取るわけにはいきません。ただ、強い気持ちで精緻なプロジェクションが描かれていれば、「まあ、まずはやってみよう」というカルチャーがありますね。

 もう1つ。うちの場合、ほとんど全てのビジネスが執行役会で決定できるのが大きい。取締役会は報告や別観点の監視監督機能を担っている。だから、だいたいのビジネスジャッジメントは執行役会でできるようになっています。

(写真:的野弘路)
(写真:的野弘路)

では、若い人が起案しても、筋が通っていてパッションがあれば、応援するというわけですね。

 これは正式なルートではないけれど、昨年は新入社員研修で、社長相手に10人1チームで新規事業の提案をしてもらいました。300人くらいいるので、何十チームもプレゼンしたのですが、3つか4つ、いいなと思うものがあって。その場で「すぐに取りかかって」と指示して今まさに進んでいるプロジェクトもあるのです。部長次長レベルの研修でも同じ。そういった場でのビジネスプレゼンテーションはどこの会社でもやっているでしょうが、そのプレゼンがよければすぐに実行に移している。だから、プレゼンする側も真剣になるという好循環があると思います。

それは恵まれた環境ですね。逆に、それだけいろんなチャレンジがあると、大事なのは撤退のルールだと思うのですが。

 もちろん、事業計画を出してもらって役員会でも報告してもらい、モニタリングもしているけれど、やはり自らやったことを否定して撤退するのはすごく難しい。撤退するときはトータルで大きなロスが出ているケースがほとんどだから。撤退すると挽回のチャンスもゼロになるわけだし、当人が「撤退します」とは言えないよね。だから撤退するときは、その上の人間が強く指摘してあげなくてはならない。もっというと、事業の撤退を決めてあげるのが、私の仕事かもしれないですね。

先ほど、新しいことにトライする社風を作るためには人事が重要だというお話を聞きましたが、採用はどうされていますか。

 証券会社は他の業界に比べるともともと人材流動性の高い業界です。さらにうちの場合は、ハイブリッドビジネスをやっているのでなおさらですね。ハイブリッドビジネスのコアメンバーの多くは、外部から転職してきた人たちです。証券会社で長年やっていた人が、不動産やエネルギー、農業の分野を知っているわけではありませんから。グループ内にハイブリッドビジネスが生まれているので、多様な人材が集まるカルチャーは醸成できていると思います。

 問題は、新卒採用。残念ながら新卒採用にはダイバーシティーがまだ不十分なので、手を入れています。これまでのスーパージェネラリストタイプではなく、AI(人工知能)の知見を持つ人や、データ解析のスキルで尖(とが)っている人、そういうエッジの効いた人たちを採用できないとダメだと。具体的には、能力によっては初任給で40万円以上を支払うようなエキスパート採用もしています。

 それだけではなくて、いわゆる日本でいうところの「中途採用」ですね。これをもっと定期的に大々的にやるべきだと指示しています。新卒採用計画と同じように中途採用計画を出して、新卒と同じように採用していこうと考えています。メーカーでいうところのフェローのような制度も4年前からつくりました。マネジメントラインには乗らないけれど、能力のある人はその分野で活躍してもらって、部室店長よりもよい処遇で働いてもらう。そういう職制もつくっています。