伊佐山 元(いさやま・げん)
伊佐山 元(いさやま・げん)
WiL代表。パートナー企業(出資企業)に眠る社内IP(知的財産)を活用した新規事業創出や企業内起業家の育成にも力を入れている(写真:山田愼二)

確かに高齢層に預貯金が偏在しているのは日本の1つの特徴でもあります。しかし、若い人が活躍できる社会をつくらないと未来は面白くならない。欧米だと若いうちから資金の運用を意識していくのですけれど。

 若い時分から金融経済教育や投資教育、そして投資を実践していくのは重要なことだと思っています。2年前にCONNECT(コネクト、東京・中央)というスマートフォン特化型の証券会社を開業しました。若い人たちに手軽に投資の世界に入ってきてほしいからです。月1万円ずつでもいいから、有価証券を扱う機会を持ってもらいたいですね。

暗号資産を担保にした「デジタルアセット担保ローン」や、投げ銭システムの「KASSAI(カッサイ)」といった新しいタイプのフィンテック事業も進んでいます。さらには、不動産や農業などにも投資の幅を広げていますよね。

 証券ビジネスはかなりストック型のビジネスモデルに転換しているといえども、やはりマーケット環境によって業績がぶれやすい。だから、違うリスクプロファイルのビジネスを持っておくと、安定した収益基盤を確保できると考えています。また、富裕層の方々は有価証券や預貯金だけではなく、不動産や別荘、リゾート施設、ワイナリーを持っていたりする。そういった富裕層の方々や機関投資家に対し、オルタナティブ資産としての不動産やインフラなどから生じる安定的なキャッシュフローを裏付とした金融商品を組成し、伝統的な有価証券以外のオルタナティブ資産の投資機会も提供していきたい。

 例えば不動産投資信託のREITは、安定的な家賃収入を得ることでキャッシュフローが生まれ、不動産を証券化できます。また、大和エナジー・インフラ(東京・千代田)では太陽光やバイオマス発電所などに投資し、安定的なキャッシュフロー・収益を上げ、そのキャッシュフローを裏付とした金融商品を組成しています。機関投資家などは太陽光発電所そのものを買うことはなかなかできません。ですが、それらがパッケージされた金融商品になっていれば、投資することができる。大和フード&アグリ(東京・港)では農業ビジネスに投資していて、オランダのような大規模農業化に成功し、キャッシュフローが安定すればファンドにしたいと考えています。

なるほど。そうなると次は大和ワイナリーあたり、可能性がありますかね?(笑)

 いいですね、ワイナリー(笑)。ただ、農業をやってみて分かったのですが、自然を相手にする商売はやはり不測の事態が常に起こり得る。10年、20年、場合によっては30年くらいの目線で、いろいろ失敗をくり返しながら知見をためていかなくてはならないですね。

今、失敗をくり返してと言われましたが、金融業界というのは、いかに失敗をしないようにするかと考える人が多数だという印象が強いです。大和は積極的にリスクを取りにいくイメージがあります。

 1ついえるのは、金融とひとくくりにいっても、銀行と証券ではだいぶビジネスモデルが違う。銀行は確かにストックビジネスが主流だから、リスクを取りにくいカルチャーがあると思います。でも証券の場合、債券やエクイティのディーラーなんて1日で何億円も損したりすることもあるわけですよ。でも、損したからすぐ経歴にバッテンがついてどこかに転勤だ、なんてドラマみたいなことをやっていたら組織が回らない。損することも得することもあって、トータルでどうプラスに持っていくかというビジネスなのです。そもそも「リスクに挑まないとビジネスにならない」というベースがあります。

 もう1つは、新しいことにチャレンジする大和証券グループのDNAがあります。あまり知られていないかもしれませんが、大和証券は結構「業界初」に挑んでいます。例えば、日本で初めて投資組合(投資信託の原型)を始めたり、海外に初めて店舗を出したりしたのもそう。日本の上場会社初の持ち株会社も実は大和証券グループ本社です。オンライントレードも、最初に乗り出したのはうちですね。ではなぜ、そういったカルチャーがあるかというと、これは誤解を恐れずにいうと業界トップじゃなかったから。常に新しいことにチャレンジして道を拓(ひら)いていくのが、2番手、3番手の役目ですよね。

しかし、リスクを取れ、挑めといっても、失敗したらすぐ左遷されるというのが多くの会社の現実です。

 だから重要なのは、形で見せてあげること。大きな損をしたり失敗をしたりしても、そのプロセスが正しくてチャレンジしたものであれば、その人物をきちんと評価する。僕もそうでしたが、ビジネスパーソンは人事に一番興味があるから。挑戦した人間が、左遷させられるのか昇格するのか、みんなうの目たかの目で見ている(笑)。失敗したのに人事考課が大きく上がって昇格する場面を見ていれば、次もまたリスクを取りにいける。口で言うよりも、人事で示す。それを繰り返すことで、徐々に「自分もやってみよう」というカルチャーが醸成されると思っています。