長年エンジニアリング業界をけん引する日揮グループ。いま、世界的な脱炭素化の流れを受け、さらに幅広い社会課題の解決に貢献する企業グループを目指し、新たな変革に取り組んでいる。

 オイル&ガスの領域で培ってきた高度なエンジニアリング力を基に、技術で地球環境を守る企業へと進化。さらに、プラント実現に向けたEPC(設計、調達、建設)の知見やノウハウを生かして、各種ソリューションを提供する企業へと姿を変えつつある。変革を迫られた企業が考える「両利きの経営」と、次世代の育成について、WiL代表・伊佐山元が聞く。

(構成:佐藤友美)

山田昇司(やまだ・しょうじ)
山田昇司(やまだ・しょうじ)
日揮代表取締役社長執行役員、日揮ホールディングス取締役。1983年中央大学法学部卒。同年日揮に入社。営業畑で国内・海外の部長を歴任(写真:的野弘路)

日揮はエンジニアリング業界の国内最大手ですし、プラント(工場などの製造設備)設計などハードウエアを作る企業だと思っていましたが、国内外での病院経営のような事業領域も意外と長く手がけているのですね。

 なぜエンジニアリング会社が病院経営なのかと思われるかもしれませんが、ハードウエアとしての病院の建設を通じて、業界に「思い入れ」が発生したからということに尽きます。

 病院建設のプロジェクトを通じて、いろいろなお医者さんとつながりができる。もちろん私どもに医療行為はできませんが、病院を円滑に運営するための周辺領域に関してのノウハウがたまっていきます。それらの財産を生かして、設計だけではなく、コンサルティングやマネジメントもしていこうという流れです。現在は日本の「医療システム」を海外に持っていきたいと考える先生方と、海外の病院建設や経営も行っています。

 企業のアイデンティティーとして、建物や産業設備などのハードをつくることにはこだわっていますが、その周辺領域で自分たちのできることを開拓していくマインドを持ち合わせる社員が多いと感じます。

世界的にはSDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素化がトレンドですよね。日揮も「Enhancing planetary health」をパーパス(存在意義)としていますが、脱炭素化にどう取り組んでいくのか、とても興味があります。

 エネルギー業界に長い間身を置いている会社ですから、脱炭素にどう取り組むかは大きなテーマです。そもそも日揮の前身は日本揮発油で、JGCはJapan Gasoline Companyの略です。自分たちのメインビジネスの一つであるオイル&ガスがどうなっていくのか、不安に感じている社員もいるかもしれません。しかし、私は「変化はチャンス」だと思っています。これから新しい技術開発が必要になるでしょうし、それに対するエンジニアリングの提供も必要になるでしょう。そこで勝負したい。

 次世代のエネルギー源が何になるかは、常に議論しているところです。それは水素かもしれないし、他のものかもしれない。水素社会になるとしても、それが実現するのは2030年半ばから40年くらいだと思います。その15年先の水素社会までの道のりを「トランジションタイム」として、どう過ごしていくのかも考えていかなくてはならない。