菅義偉前首相は2020年10月、政府は2050年までに国内の温暖化ガスの排出を実質でゼロにするカーボンニュートラルを目指すと発表した。これに呼応する形で、2050年までの「カーボンニュートラル」実現を中期計画に盛り込んだDaigas(大阪ガス)グループ。エネルギー会社が「脱炭素」を宣言するのは、いわば自動車の製造企業が「脱自動車」を宣言するようなものに等しい。

 大阪ガスの「ネットゼロ宣言(一定期間に排出される温暖化ガスを相殺して、正味の排出量をゼロにすること)」はいかにして実現するつもりなのか。将来を見据えた人材をどう育成していくのか。大阪ガスの藤原正隆社長に話を聞いた。(構成:佐藤友美)

<span class="fontBold">藤原正隆 ふじわら・まさたか</span><br />大阪ガス代表取締役社長。1958年生まれ、大阪府出身。82年大阪ガス入社。2013年大阪ガスケミカル代表取締役社長を経て、21年1月より現職。(写真=的野弘路)
藤原正隆 ふじわら・まさたか
大阪ガス代表取締役社長。1958年生まれ、大阪府出身。82年大阪ガス入社。2013年大阪ガスケミカル代表取締役社長を経て、21年1月より現職。(写真=的野弘路)

大阪ガスグループの中期経営計画に「脱炭素化」の言葉がありました。これは自動車をつくる企業が脱自動車と言っているようなもので、非常にインパクトがありました。具体的にどのように実現されていく予定なのでしょう。

 2021年1月、今後の道筋をはっきりと決めた「ネットゼロ宣言」を行いました。ガス事業においては、「都市ガスのカーボンニュートラル化」と「天然ガス利用による低炭素化」を二本柱にしています。

 この方針は、現時点だけを捉えれば矛盾のように感じられるかもしれません。しかし、時間軸という概念を持てば、決して矛盾する話ではないと考えています。まずは「低炭素化」を実現し、その上で「カーボンニュートラル化」を目指していきたい。

 最初に、都市ガス事業に関してコージェネレーション(熱電併給)をはじめとする省エネルギーシステム機器を普及していくことで、低炭素化を実現していきます。また、現在石炭や石油を使っている部分は天然ガスに置き換えていきます。

 天然ガスは二酸化炭素(CO2)排出量が石炭の約6割で、化石エネルギーの中では、環境に対するインパクトが小さいエネルギーです。しかも1次エネルギーなので蓄えることもできます。これをまず、低炭素を進める第一歩にしたいと考えています。

 次に、ボランタリー・クレジット(民間団体が発行するカーボンクレジット)を活用したカーボンニュートラルな都市ガスの導入です。これは既に始めています。

 さらに、メタネーションです。メタネーションというのは、グリーン電力(再生可能エネルギー由来の電力)でつくった電気で水を電気分解して水素をつくり、その水素とCO2を反応させてメタンをつくる方法を指します。

 ここで生まれるメタンはカーボンニュートラルメタンです。これを再び燃焼するとCO2が出ますが、そのCO2はメタンをつくる際に回収したものと同程度の量であるため、環境にやさしいエネルギーと言えます。

 この3段階をパラレルに進めることで、都市ガスのカーボンニュートラル化を進めることができると考えています。