もう一つ伺いたいのが、本業から少し離れた部分でのビジネスの話です。新型コロナウイルスの感染拡大で人々の価値観が変わる中で、Daigas(大阪ガス)グループとしてはどのような分野に新規事業の芽があると思われますか?
今まで我々がやってこなかった領域として、「住ミカタ・サービス」という“家ナカ”のサービスがあります。それまでガス器具の修理はしてきましたけれど、水道やエアコンの修理はやってこなかったんです。これらにも取り組むことで、おうちのお悩みにワンストップで対応できるようになります。
今後は、ほかのエネルギー企業との価格競合を繰り返すだけではなく、新しいサービスを立ち上げてアカウントを増やし、差別化していかねばと考えています。
また、今までエネルギー分野にあまり重点をおいてこなかったような通信事業者も、本格的にエネルギー事業に参入してきています。こうした新しい競合に競り勝つとなると、差別化が必要です。我々が強いのは、リアルな接点があること。そして、地域密着であることです。そこにEC(電子商取引)をどう組み合わせて勝つことができるか。
通信会社は「おうちのケータイ、どうですか?」と、家に訪問しないですよね。我々はそれができる会社である強みを生かして、家やビル、工場に対して、いかに新しいサービスを提供し、いかに電力会社や通信会社と差別化するかを必死に考えています。
様々なユーザーに対して新しい仕掛けを考えられるかどうかは、結局、人材が育つかどうかにかかっていると感じます。イントレプレナーや社内起業家のような存在を、どう育成しているのですか?
大阪ガスには、もともと新しいもの好きが集まっているところがあるんですよね。きれいな言葉で言うと、進取の気性に富んでいるとも言えるし、関西弁で言うと「いちびり」でもあります。
ただ、付帯サービス的な事業を考える人間と、将来的に会社の基盤となりうるビッグビジネスを考える人間はまったく別だと思うんですよね。ゼロからこれまでにないビジネスを考える人材は、まだまだ少ないと感じます。この人材をいかに育てていけばよいかは、正直言ってまだ見えません。
若手を対象とした新規事業創出コンテストをやるようになって5 年がたちます。イノベーション推進部が、その司令塔になってくれていますが、なかなか「全然違うことを考えているな!」 「おっ!」と思うようなビジネスモデルに出合えてはいないのが本音です。
もしかしたら、そういった新事業の芽は、他社から採用する可能性もあるかもしれません。スタートアップを育てていこうという話になるかもしれないです。
安心・安全を売るインフラ企業ですから、もともと安定志向の人材が集まりやすいのかもしれないですよね。でも、今後を考えるとビッグチャレンジする環境もつくらなくてはならない。ある意味、矛盾することにチャレンジしなければならないわけですよね。御社では、どのように、イノベーション人材を育てていこうと考えていますか?
新しいビジネスをやりたいと思ったら、手を挙げてもらうチャレンジ制度があるのですが、昔からあまり使われていないんです。逆説的に言うと、本当に新しいことをやろうとする人は、組織や仕組みがどうであれ、やろうとするものなのでしょう。
今から5年ほど前は、新規事業に関しては主にイノベーション推進部が担ってきました。でも最近は、幅広い部署で新しい動きが出てきています。イノベーション推進部主導でなくても、各部署が 自分たちで気になることをアメーバ的に行うような風土が生まれています。これはいい傾向だと感じています。
私はたまたま「常に新しいことをやれ」「来年も今年と同じことをやっていたら承知せんぞ」という上司に恵まれてここまできました。今度は私自身が、それをもう一度社内に浸透させる役割を担わなくてはと感じています。
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